「解熱剤は飲まないほうがいい?」「咳止めが効くというエビデンスはない」…小児クリニックの医師が語る「風邪薬」の意外な真実!
発熱はいいこと?
発熱に対する処方も同じである。発熱はウイルス(病気)が出しているのではない。子ども(患者)が自分で出しているのである。体温が上がれば免疫系が活性化される。したがって体内のウイルスが死んでいく。発熱は、風邪薬よりももっと根本的な風邪の治療薬ということになる。 では、解熱剤は飲まない方がいいのか。これに関しては科学的データが複数あり、結論を見ていない。解熱剤を飲むと、有熱期間が長引くというデータもあるし、変わりはないというデータもある。 ただ、理屈で考えれば熱があることは悪いことではないので、解熱剤の使い過ぎは控えた方がいいだろう。大人は37℃台の熱でもだるかったりするが、子どもは熱に強い。38.5℃以上でもへっちゃらのことがある。無理に下げる必要はないし、熱を下げても病気は治らない。それに消炎鎮痛剤は副作用の問題もある。
風邪の治し方
では、風邪はどうやって治せばいいのか。一番良くないことは、医者の出す薬に頼って、それで治ると思ってしまうことだ。風邪薬は気休めである。効いたら儲けものである。一番大事なのは、休むことである。冬なら加温・保湿といった環境整備が重要だ。 要は体をいたわって、無理をしないことである。ところがこれが難しい。小児クリニックにやって来る風邪の患者の大多数が、保育園児である。自宅で過ごしている子が風邪を引くことはめったにない。保育園へ我が子を迎えに行ってみれば分かるが、園の子どもたちはみんなハナを垂らしている。集団生活をしていれば、必ず風邪ウイルスが蔓延する。 保育園に子どもを預けている保護者は働いているので、子どもに保育園を休ませるのは相当難しいだろう。でも、それを承知でぼくは言っている。無理しないでくださいねと。 風邪が治るか否かはウイルスの強さと子どもの抵抗力のバランスで決まる。漫然と医者からもらった薬を飲んで、無理して保育園(あるいは幼稚園)に行かせると風邪は悪化する。つまり気管支炎や肺炎になる可能性がある。 肺炎=入院ではないが、重症度の高い肺炎や、年齢の低い(1歳未満)肺炎は入院になってしまう。重い肺炎というのは、風邪ウイルスが肺に広がっただけでなく、鼻の奥にいる細菌(常在菌)が、鼻から肺に広がって細菌性肺炎になっているケースである。