“2大麺”が夢の競演! そば界レジェンド「柏 竹やぶ」と日本一のラーメン店「飯田商店」コラボの味は!?
2024年の2月におこなわれたイベント当日は、予約サイトで何とか席を勝ち取った200名超の客がコラボメニューを味わった。提供されたスペシャルコラボメニューは、阿部さんによる「身欠きにしん炊きあげ甘露煮」と「ゼンマイの煮つけ」「帆立の麹味噌合せ」「あら挽きそばがき」に、飯田商店の「しょうゆらぁ麺」。食後には「甘味 水あずき」が用意された。 食べる前は、誰もが「そばとラーメン?」といぶかしく思っていたよう。けれども、味わい深い前菜と温かなそばがきがメインのしょうゆラーメンを引き立て、最後の甘味で幸せな気持ちがキープされるという絶妙の構成。まったく違和感のない、完成度の高いコースになっていた。もちろんすべての皿が、思わずうなってしまうほどのおいしさ。
「最高に楽しいのは、料理をつくっている瞬間」 飯田さんは以前から、「ラーメンは麺料理として、そばにはかなわない」と思っていたという。けれども今回のイベントで、その考えが少し変わったそうだ。 「古くからの歴史や伝統がある”おそばの世界”にあこがれてここまでやってきましたが、今回のイベントでは、空間の中で阿部さんの料理と僕のラーメンが融合していた。『かなうとか、かなわないとかではなく、それぞれがあっていいんだな』と素直に思えました。阿部さんといえば、名だたるシェフたちが『阿部さんはすさまじいよ』と称える存在。その世界観に寄り添えた、本当に光栄な一日でした」(飯田さん) 「今日のイベントは、なかなかの発信力があったんじゃないかな。僕は今年80歳になりましたが、新しい時代を生き抜いていく飯田さんとコラボすることで、新たな発見がいくつもあった。最先端のラーメンをつくる姿に時代の変化も感じたし、いいところは盗ませてもらって、今後に活かしていきたいですね」(阿部さん) 同じ「日本を代表する麺料理」をつくりながらも、あまり交わることのないそばとラーメン業界。同じ厨房で「おいしい料理を提供する」という共通の目標に向かう経験は、とても楽しく有意義なものだったようだ。 「料理人は、つくっているときが最高なんですよ。飯田さんも、厨房で本当にいい顔をしていた。料理ができあがって提供してしまえば、あとは食べる人のもの。昔、店に食べに来た坂本龍一さんが『僕は、作曲しているときが一番楽しい』とおっしゃっていましたが、それと一緒なんでしょうね」(阿部さん) ──「おいしさとは?」などを語る後編に続きます── photo:森カズシゲ、text:萩原はるな