<大阪北部地震から1年> 「名前のある地震・活断層」ばかりにとらわれるな
地震は不意打ちでやってくる
死者6434人、10万棟以上の建物が全壊する被害を出した1995年の阪神・淡路大震災は、有馬―高槻断層帯の西に隣接する六甲・淡路断層帯の一部が活動したことによって起きた。地震学の分野では、このような活断層があることや、活断層がひとたび動けば大きな地震が発生することはよく知られていた。しかし、「近畿地方は地震が少ない」といった根拠のない話があったように、地震に関する調査研究の成果が国民に十分に伝わっておらず、防災に活用する体制ができていなかった。この反省から、地震調査研究推進本部が設置され、全国の活断層の調査が進んで、現在に至っている。 2016年の熊本地震は、こうした調査によって発生の可能性が指摘されていた活断層が活動したことによって起きた大地震だ。しかし、このような例は実はそれほど多くなく、この間に起きた内陸の被害地震のいくつかは、事前に活断層の存在がしっかりと確認されていなかった「ノーマーク」ともいえる場所で起こっている。昨年9月の北海道胆振東部地震も震源域の西に「石狩低地東縁断層帯」という活断層の存在が知られていたものの、この活断層ではないところが震源になったとされている。 ましてや、大阪北部地震のような、評価対象外のM6前半クラスの地震となると、日本中のいつどこで発生しても不思議はない。「地震は不意打ちでやってくる」のだ。
海溝型地震への備えはもちろん重要だが…
地震対策というと、近い将来の発生が危惧されている「南海トラフ巨大地震」や東日本大震災を引き起こした「東北地方太平洋沖地震」などの海溝型地震に対する備えばかりに注目が集まりがちだ。強い揺れだけでなく、大津波を伴う可能性が高いこうした地震に備えるのはとても重要なことではある。被害地域が広域にわたり、しっかり備えておかないと国力の低下にもつながりかねないためだ。国全体で、備えていかなければならないことは言うまでもない。 しかし、海溝型地震の影響を受けづらい地域が安全なわけではない。そして、既知の活断層の近くだけが危険なわけでもない。また、普段あまり地震活動がないから安心というわけでもない。 海溝型地震と既知の活断層で起こる地震だけが被害をもたらすわけではないことを、大阪北部地震は明らかにした。東日本大震災や熊本地震などと比べれば、被害が小さい部分もあるが、被害を受けた一人ひとりにとっては、その後の生活が一変してしまうような大きな被害だ。 「名前のある地震・活断層」ばかりにとらわれずに、日本中どこに住んでいたとしても、住宅の耐震化や家具の転倒防止など、地震への備えを着実に進めておきたい。 飯田和樹/ライター・ジャーナリスト(自然災害・防災)