秋吉台のカルスト地形が育む湧水たたえた「別府弁天池」…名水で養殖したニジマス発信へ「ますバーガー」
山口県美祢市の中部から東部にかけて広がる日本最大級のカルスト台地・秋吉台は2025年、国定公園に指定されて70年の節目を迎える。市全域が対象の「Mine秋吉台ジオパーク」は、人類の誕生よりもはるか昔、3億5000万年前から続く地球と生命の「記憶」だ。26年春の国連教育・科学・文化機関(ユネスコ)世界ジオパーク認定を目指して奮闘する地元住民らのラストスパートの年が幕を開ける。 【写真】「ますバーガー」を紹介する篠原さんら
秋吉台のカルスト地形が育んだ湧水をたたえる「別府弁天池」(美祢市秋芳町別府)は、陽光が差すと緑がかった青色の輝きを放つ。水中のミネラルや光の波長の影響とみられるが、はっきりとした理由は「まだ解明されていない」(美祢市教育委員会)という。
水深は4メートルほど。水温は1年を通して14度前後を保ち、湧水量は一説では毎秒180リットルに及ぶ。不純物が少なく高い透明度を誇り、カルシウムが程良く含まれていることから、1985年に全国の「名水百選」に入った。
池の水は古くから住民の生活や農業を支えてきた。その恵みの一つにニジマスがある。地場産業の振興を目的として50年代に誕生した美祢市営の養殖場は、池のほとりで常時5万匹を育てている。
養殖場職員の渋谷暢久さん(48)は「水温が低く安定した名水は、北米原産のニジマスに望ましい生育環境。特有の臭みが少なく、魚の苦手な人でも食べやすい」と太鼓判を押す。
特産のニジマスを市外に発信するため、地元のまちづくり協議会は新商品の研究開発に取り組んでいる。2019年から現地の直売所で販売する「ますバーガー」は、Mine秋吉台ジオパークを象徴する白(石灰岩)、赤(銅)、黒(石炭)の3色を目で楽しめる自慢の逸品となった。
バーガーのバンズ(丸いパン)が最大のアピールポイントで、白色の生地は米粉、赤色には根菜のビーツ、黒色には竹炭を練り込んだ。バンズは直売所の調理場で焼き上げ、パン粉で包んで揚げたニジマスの切り身と地元産のトマトやキュウリを挟む。