「もはや“ととのい至上主義”だ」「銭湯が、お年寄りが行けない場所になりつつある」…サウナの「異様な流行」の裏で進む“老人の排除”の実態とは?
デフレが終わり、あらゆるものが高くなっていく東京。企業は訪日客に目を向け、金のない日本人は“静かに排除”されつつある。この狂った街を、我々はどう生き抜けばいいのか? 新著『ニセコ化するニッポン』が話題を集める、“今一番、東京に詳しい”気鋭の都市ジャーナリストによる短期集中連載。 【画像】都度利用で2000円以上かかる、最新サウナはこんな場所 ひところ、「サウナブーム」なる言葉が各種メディアをにぎわせた。 きっかけは2019年にテレビ放送された「サ道」の影響。このドラマの人気を背景に、都市部を中心にサウナの数が爆増し、「サウナ→水風呂→外気浴」の、いわゆる「ととのう」プロセスが一般に浸透した。
実際、この「温冷浴(「ととのう」プロセスのこと)」を知っている人の数は、2018年で50.3%だったのに対し、2023年には79.5%と大幅に上昇。月に4回以上サウナに行く人は、2023年で推定で約219万人にのぼる(日本サウナ総研のデータによる)。 その人気はコロナ禍で一度低迷したものの、じわじわと復調傾向を見せており、2026年にはコロナ禍前と同レベルの水準までに業界が復活するのではないか、という予測がある。
いずれにしても、サウナがアツい業界であることは間違いない。 しかし、私が気になっているのは、こうして沸騰するサウナ業界の裏側で進む「ある変化」である。それが、ひっそりとした「高齢者の排除」だ。 ■高温・低温の「二極化」が高齢者を排除? そう考えるようになったのは、サウナーである私の担当編集が述べていた実体験からである。 「私が通っていた都内某所のある銭湯は、もともと地域住民に愛される老舗の銭湯でした。ところが、以前からのサウナ人気でサウナ待ちの列ができるようになり、その後、大規模な改装がありました。
すると、6人しか入れなかったサ室が20人弱入れるようになり、20分に一度オートロウリュがされる熱々の空間に。水風呂もチラーが効いてキンキンになり、休憩室には常に扇風機が回っている……という、『ととのう』ための場所になったんです。 その結果、若いサウナーと外国人が訪れる場所になって、昼から夜まで満員になっていて、オリジナルのTシャツとかも売って経営的には儲かってそうなのですが、地域のお年寄りがすっかりいなくなってしまったんです。