家族葬、料金トラブル絶えず 「定額」と広告…数倍の請求額も 葬儀巡る相談、年900件
「定額30万円」のはずが、120万円超を請求された-。葬儀を巡り、こんな料金トラブルが後を絶たない。コロナ禍をきっかけに簡素な「家族葬」が定着する一方、葬儀社の競争も激化。インターネット上には安さを前面にうたった広告があふれ、不当表示の業者に課徴金が課されるケースも相次いでいる。(山岸洋介) 【図表】一般葬、家族葬、直葬…葬儀が多様化 費用の違いは? ■時代の流れにコロナ禍が後押し 「最も安くて7万6千円から」「必要なものがすべて含まれて40万円」。ネット上では多くの葬儀社が家族葬のプランをPRしている。 家族葬には規模や人数といった定義はないが、広く参列者を招く従来の葬儀より「コンパクトで安い」といったイメージが強く、近年急速に拡大した。 終活関連サービスを手がける「鎌倉新書」の調査によると、葬儀のうち家族葬として行われた割合は2015年は31%だったが、コロナ禍が続いていた22年には56%で初めて半数を突破した。 核家族化や都市部への人口集中で大きな葬儀のニーズが下がっていたところへ、コロナ禍で感染リスクを減らすために参列者を減らす傾向が強まったことが、決定打になったという。コロナ禍を脱した24年も50%だった。 ■オプションが付加され平均は100万円超 それに伴い、葬儀社にとっては葬儀1回当たりの収入が低迷。行政書士で相続・終活コンサルタントの明石久美さん(55)は「業界は価格競争が激しく、件数をこなす必要がある。集客のために安さを打ち出さざるを得なくなっている」とみる。 広告でうたっている低価格では経営が成り立たないため、さまざまなオプションや定額プランに含まれないサービスが付加され、総額がつり上がることが多いという。 「無葬社会」「絶滅する『墓』」などの著書があるジャーナリストで僧侶の鵜飼秀徳さん(50)も「広告の価格は最小限のプラン。必要なものを追加すると5~10倍の請求額になることはざらにあり、契約時に注意が必要」と話す。 鎌倉新書の24年調査では、家族葬の平均費用は105万7千円。問題のある契約ばかりではないが、広告からイメージする価格帯とは大きな開きがあった。 国民生活センターによると、葬儀サービスに関する相談は23年度に886件あり、前年度より65件減ったが、高止まりしている。 ■「追加料金不要」のはずが 契約前に慎重に判断を 悪質なケースは行政処分の対象になり、消費者庁は課徴金制度ができた16年4月以降、3社に179万円~1億180万円の納付命令を出している。 いずれも広告や自社サイトで家族葬のプランを「追加料金不要」「定額」と表示しながら、実際には追加料金が発生していた。 同センターは「家族が亡くなると、遺族は短時間でさまざまな判断を迫られる。葬儀社との打ち合わせは、ほかの親族や第三者ら冷静な人を交えて複数で行う方がいい」と指摘する。 明石さんも「オプションや人数に応じ、請求額が見積書より大幅に高くなることもある。契約前に慎重な確認を」としている。