多くの人が知っているようで知らない「銀行業界」の深刻すぎる危機
この国の人口はどこまで減っていくのだろうか。今年1年間の出生数が70万人割れになるかもしれず、大きな話題となっている。 【写真】日本人は「絶滅」するのか…2030年に百貨店や銀行が消える「未来」 そんな衝撃的な現実を前にしてもなお、多くの人が「人口減少日本で何が起こるのか」を本当の意味では理解していない。 ベストセラー『未来の年表 業界大変化』は、製造・金融・自動車・物流・医療などの各業界で起きることを可視化し、人口減少を克服するための方策を明確に示した1冊だ。 ※本記事は河合雅司『未来の年表 業界大変化』から抜粋・編集したものです。
銀行が直面する「壁」
日銀のマイナス金利政策導入や人口減少に伴う国内マーケットの縮小で収益低下に苦しむ銀行業界だが、デジタル化の波によってネット銀行が登場し、既存の銀行のビジネススタイルが大きく変わってきている。 多くの説明を要しないだろうが、ネット銀行は利用者が所有するスマートフォンやパソコンが「銀行の窓口」である。いつでも、どこにいても振り込みや残高照会といった銀行手続きが可能なサービスだ。 こうした利便性に加えて、実店舗をほとんど持たないことにより手数料も既存銀行より割安である。キャッシュレス取引が社会に定着してきたこともあって、いまやデジタルネイティブ世代だけでなく、幅広い世代に普及している。 ATM手数料の相次ぐ値上げを嫌ってネット銀行への乗り換えが進んだことに、既存銀行は危機感を強めている。とりわけ、人口減少によるマーケットの縮小ペースが速い地方銀行は深刻だ。各銀行ともインターネットバンキングサービスの拡充を図り、顧客の取り戻しに懸命である。ネット銀行の普及に背中を押される形で、金融業界全体が取り組み始めたということだ。 もちろん、既存のビジネススタイルのまま、インターネットバンキングを強化するのは非効率である。ということで、各銀行はコストの削減に取り組んでいる。メガバンクをはじめとする大手銀行を中心に店舗網やATM網の大胆な統廃合が急ピッチで進んでいるのもこうした要素が大きい。