年末年始の宮中行事から見えてくる「皇室と神道」…柔軟な制度改正が必要な理由
皇族減少で女性が初参列
宮中祭祀は歴史上、男性皇族限定が大半だったものの、高齢化と女性の社会進出などを背景に、女性皇族も担われるようになっている。 平成26年には宮内庁の山本信一郎次長(当時)が定例記者会見で、6月30日と12月31日の大祓に宮家を代表して参列する皇族の範囲を、それまでの成年男性の親王から、女性も含む成年皇族に広げたと発表。秋篠宮家の長女・小室眞子さんが、この年の大祓の儀に初参列した。親王は天皇の子と孫に当たる男性皇族のことだが、宮内庁OBはこう解説する。 「皇室の周囲には保守的な考えの人も少なくなく、皇室も伝統という歴史の呪縛に、がんじがらめにされているイメージを持たれがちですが、実際には皇室自体は時代の潮流に柔軟で、それが千年を超える世界一の歴史を誇る王・帝室となっている所以なのです」 慣例で親王に限ってきた宮中祭祀の中には戦前、親王以外の男性皇族が参列した例も実際にはあったほか、戦後も体調不良の高松宮さまに代わって高松宮妃喜久子さまが参列したケースが存在する。こうした背景もあって、現在は宮内庁や皇宮警察の職員の参列も男性限定ではない。 「祭祀は神道の行事なので、女人禁制には宗教上の意味もある」(神社関係者) 平成30年4月、京都府舞鶴市で行われた神道と密接不可分な大相撲の春巡業で、挨拶中に土俵上で突然倒れた市長の救命措置のため土俵を駆け上がった現役の看護師ら女性たちに対し、日本相撲協会側が下りるよう求めるアナウンスを流したことが大問題となった。アナウンス以外でも協会員が女性たちに「下りなさい」と声を掛け、手ぶりでも下りるよう指示していた。 協会側はアナウンスについて「人命に関わる状況には不適切な対応で、深くお詫びする」と謝罪した。人命第一は当然のことで、女性たちの現場判断は正しかったと感謝しているとも釈明。市長は搬送後、くも膜下出血と診断され、1カ月の入院が必要となった。このドタバタ劇は批判を招き、信仰に裏打ちされたものではなく、ただ単に「女性は神聖な土俵に上がってはいけない」と教条主義的に判断しただけとして一刀両断にされている。 宮内庁関係者はこう話す。 「宮内記者会の常駐記者だった朝日新聞の岩井克己さんは著書で、即位のための最も神聖な祭祀『大嘗祭』は本来、天皇が祖先神から受け継いだ男系の血と、人間である皇后の血が結ばれる一種の性的な儀式だといった旨を綴っています」 だから祭祀は男性限定となり、宗教上は女性が排除されるというロジック(論理)だ。ただ同関係者は、「宗教の歴史を振り返ると、しきたりや形式といった外形的な側面を重視する宗教観と、信仰心といった内面的な側面に重きを置く宗教観が対立する例は少なくありません」と指摘した上で、こう続ける。 「キリスト教も厳格なカトリックと比較的自由なプロテスタントに大きく分かれています。さらに細分化が進み、米大統領選で争点化した中絶禁止を訴える福音派や、日本でも子どもへの輸血反対の主張が問題視された流派があることはよく知られています。イスラム教もスンニ派とシーア派の不和は有名で、中東不安定化の一因となっているほか、穏健とされるスンニ派から枝分かれしたワッハーブ派では、国際テロ組織のアルカイダが生まれています」