誰も書かないから私が書いた~帝国主義アメリカの野望
過去にウクライナで起きたこと、そして、今後起きること
2014年2月、ウクライナでアメリカ政府が支援したクーデターが成功すると、アメリカ側はコソボとよく似たスキームを企んだに違いない。その一人がハンター・バイデン(ジョー・バイデン大統領の次男)であったことは有名だ。前回、拙稿「【ウクライナ戦争丸2年】もうホンネの話をしようよ~アメリカの「10の諸悪」」で紹介したように、当時、副大統領としてウクライナを担当していたバイデンを「屋根」にして利益をもくろんでいた、ウクライナのオリガルヒ(政治家と結託した寡頭資本家)ミコラ・ズロチェフスキーが、ハンターに多額のカネを支払っていたのは事実である。 2022年11月、世界最大級の投資・運用会社であるブラックロックは、ウクライナ経済省との間で覚書を交わし、ウクライナ再建のための公共投資および民間投資の促進で協力することに合意した。同年末には、ブラックロックのラリー・フィンクCEOはウォロディミル・ゼレンスキー大統領との間で、ウクライナ復興への投資を調整することで合意した。2023年2月になると、米投資銀行、J・P・モルガンは、ゼレンスキー大統領と、破壊されたインフラを再建するための新たな投資ファンドに民間資本を呼び込むことを視野に入れた覚書を交わすまでになる。同年6月には、「ブラックロックとJ・P・モルガン・チェース(J・P・モルガンの親会社で銀行持ち株会社)、ウクライナと復興銀行設立で提携」と報道されるに至っている。虎視眈々と、カネ儲けの話が進んでいるのだ。 つまり、アメリカの一部の投資家や富豪は、戦争をつづけることで儲けているし、戦争を停止しても儲けるための算段をつけている。そうした彼らの目論見に沿うかたちでバイデン政権がある。だからこそ、アメリカはウクライナ戦争を継続させたがっているのだ。これこそ、アメリカ帝国主義そのものなのである。
『帝国主義アメリカの野望』の上梓
不可思議なのは、こんなアメリカが自由や民主主義を尊重すると称して、リベラルデモクラシーを世界中に普及させようとしてきた一方で、その帝国主義的な側面について批判的に解説する書物が極端に少ないことである。 とくに、日本では、アメリカ批判が忌避されている。つまり、アメリカの事実上の「属国」と化した日本では、「宗主国」たるアメリカ政府を批判できないムードが漂っているように思われてならない。アメリカ政府を怒らせると、さまざまな制裁が現実に執行されて大変な目に遭いかねないという雰囲気が横溢(おういつ)しているのだ。 そう考えると、6月に社会評論社から上梓される拙著『帝国主義アメリカの野望:リベラルデモクラシーの仮面を剥ぐ』(下の写真)も白い目で見られることだろう。400字換算800枚を超す大著全体がアメリカ帝国主義批判であふれているからだ。だが、それは、逆に言うと、この本を読めば、日本においてあまり語られていないアメリカの「真実」がわかるということになる。帝国主義アメリカの「属国」でありつづけている日本がいかに間違っているかを理解できるようになるはずなのである。 (出所)https://www.amazon.co.jp/dp/4784513884 森永卓郎著『書いてはいけない日本経済墜落の真相』を読めばわかるように、日本には、琴線に触れる重大な内容であるがゆえに、主要マスメディアが決して紹介しない情報が存在する。そんな情報であっても、的確な識見としっかりした事実に裏づけられていれば、少しずつ人口に膾炙(かいしゃ)できると信じている。それは、ジャニー喜多川の性加害を無視してきた、悪しき日本のマスメディアに一矢報いたBBCが証明してくれたことでもある。 率直にいうと、私は国家というものが好きではない。だが、アメリカの「属国」であるよりは、「独立国ニッポン」であってほしいと心から願っている。拙著『帝国主義アメリカの野望』は、「憂国の士」必読の一冊なのだ。尊敬するノーム・チョムスキーが「アメリカこそが「ならず者国家」だ!」と説く『すばらしきアメリカ帝国』(集英社、2008年)(原題はImperial Ambitions, 2005)とともに、より多くの読者の書架に並べてほしいと願っている。
塩原 俊彦(元高知大学大学院准教授)