誰も書かないから私が書いた~帝国主義アメリカの野望
アメリカの国務長官とコソボ
未遂事件も紹介しよう。クリントン政権の国務長官だったマデレーン・オルブライトは自分の投資会社オルブライト・キャピタル・マネジメントを保有していた。同社は2013年に予定されていた、国営通信事業者PTKの民営化に注目した。同社の株式の75%売却に関心を示したのである。彼女はすぐに、数億ユーロの値がつくと予想される入札の最有力候補に浮上する。何しろ、彼女はアメリカの国務長官であったから、その政治力は大きく「カネになる」というわけだ。 オルブライトの関与を批判する人々は、彼女が当時コソボで唯一の民間携帯電話会社の株式をすでに所有しており、PTK事業の買収は重要な部門に対する影響力を彼女の手に集中させすぎると訴えた。オルブライトは当初反抗的だったが、NYT(ニューヨークタイムズ)紙の一面を飾った記事によって、彼女のコソボへの関与をめぐる潜在的な利益相反が注目されたため、結局入札を取り下げた。その後、プロセスは崩壊した。 だが、娘のアリスとコソボの関係はつづいている。彼女はコソボを含む貧しい国々に開発助成金を発行するアメリカの資金提供団体ミレニアム・チャレンジ・コーポレーションの最高責任者である。オルブライトが国務長官だったときに上級顧問を務め、のちに彼女のコンサルティング会社の副会長を務めたバルカン半島の古参、「ジェームズ・オブライエンは、最近、欧州・ユーラシア問題担当次官補としてこの地域に戻ってきた」、と「ポリティコ」は紹介している。 先に紹介したNYTによれば、ビジネスのためにコソボに戻ってきた人物のなかには、元陸軍大将で、セルビアの強権者スロボダン・ミロシェビッチに対する空爆作戦を指揮した元NATO軍欧州連合最高司令官ウェスリー・K・クラークがいた。クラークは長年にわたり、コソボのエネルギー部門に投資するさまざまな試みにかかわってきたが、カナダに本社を置くエンビディティ・エナジー社が進めた、コソボの膨大な褐炭を液化して合成燃料をつくる計画を推進しようとした。2013年、コソボ政府は外国人投資家がコソボの利益にならない方法で国の鉱物資源を開発するのを防ぐように設計された鉱業法を静かに修正し、公募なしで石炭を探すライセンスを発行できるようにした。その後間もなく、エンビディティはコソボの領土の3分の1にわたって褐炭を探す調査ライセンスを与えられる。しかし、ベクテル汚職が問題化したこともあって、クラークの計画は国連開発計画(UNDP)を憂慮させ、結局、頓挫した。これがアメリカの帝国主義の実態なのだ。