退職金は激減、仕事の意義を見失う…50代会社員を襲う「不安の正体」
50代で仕事の意義を見失う
また、「定年後」の問題は、60代以降だけが当事者というわけでもない。 たとえば、『ほんとうの定年後』のなかでは、〈キャリアの中で人は仕事に対する意義を見失うタイミングがあり、多くの人は50代でその転機を経験する〉と書かれている。 「他者への貢献」「生活との調和」「仕事からの体験」「能力の発揮」「体を動かすこと」「高い収入や栄誉」といった、日本人が働く上で感じる価値観を分析してみると見えてくることがあるという。 〈歳を経るにつれ、仕事を通じて感じる価値は減じていく。30代になると多くの因子が急激に下がり、仕事に対して緩やかに価値を感じなくなっていくのである。 人数自体は減少していくが、会社で地位を上げ収入を高めることに希望を見出す人は、30代や40代の時点でもなお一定数存在している。ただし、それ以外の要素はだんだんと重要だと感じなくなってくる。「生活との調和」は引き続き重要な価値となっているが、これは家庭を持って子供ができ、仕事を通じて家族の生活を豊かにすることを求める人が増えるということだろう。 多くの人が仕事に対する希望に満ち溢れていた20代から、人は徐々に仕事に対して積極的に意義を見出さなくなっていく。そして、落ち込みの谷が最も深いのが50代前半である。この年齢になるとこれまで価値の源泉であった「高い収入や栄誉」の因子得点もマイナスとなり、自分がなぜいまの仕事をしているのか、その価値を見失ってしまう。 定年が迫り、役職定年を迎える頃、これからの職業人生において何を目標にしていけばいいのか迷う経験をする人は少なくない。そうした現実がデータからうかがえるのである〉(『ほんとうの定年後』より) 退職金は激減、仕事の意義を見失う……定年が現実味を帯びてきた50代にはそうした大きな問題と不安が直撃する。 データなどから実態を正しく把握しておくことで、少しは安心できるのかもしれない。 つづく「多くの人が意外と知らない、ここへきて日本経済に起きていた「大変化」の正体」では、失われた30年を経て日本経済はどう激変したのか、人手不足が何をもたらしているのか、深く掘り下げる。
現代新書編集部