トランプ氏、商務長官に富豪のラトニック氏起用 高関税政策支持
トランプ次期米大統領は19日、新政権の商務長官に米金融会社トップのハワード・ラトニック氏を起用すると発表した。トランプ氏の掲げる高関税政策を支持する富豪で、大統領選では巨額の献金によりトランプ氏陣営を支えた。産業・通商政策や対中国の半導体輸出規制などで指揮を執る。 トランプ氏は声明で「ハワード氏はウォールストリート(金融街)で30年以上にわたりダイナミックに力を発揮してきた」と評価。「関税と貿易に関する課題を主導するだろう」と述べ、米通商代表部(USTR)とともに関税引き上げで重要な役割を担わせる考えを示した。 ラトニック氏はニューヨークに拠点を置く金融会社キャンター・フィッツジェラルドの最高経営責任者(CEO)。トランプ氏の政権移行チームの共同代表を務め、主要閣僚の人選を助言してきた。2001年9月の米同時多発テロの際、世界貿易センタービルのオフィスにいた658人の従業員を亡くし、その後の経営立て直しで辣腕(らつわん)を振るったことでも知られる。 米メディアによると、トランプ氏の古くからの友人で、今回の大統領選では600万ドル(約9億円)以上を献金した。「ウォールストリートで彼ほど熱烈なトランプ氏支援者はほとんどいない」(ブルームバーグ通信)とされる。関税の大幅引き上げを支持しており、全ての国に10%、中国に60%の関税を課すとのトランプ氏の公約実現を推進するとみられる。 閣僚人事を巡り、ラトニック氏は、自らを経済閣僚の最重要ポストである財務長官に起用するよう求めていたとされる。トランプ氏の大統領選勝利に貢献した実業家のイーロン・マスク氏もX(ツイッター)への投稿でラトニック氏を推したが、別のポストに収まることになった。 ラトニック氏は投資や不動産など幅広い事業に関与しており、産業政策を監督する商務長官就任について「利益相反」と問題視する声もある。【ワシントン大久保渉】