ホットロッド御用達モデル「シボレー カマロ ファイナルエディション」に試乗!
アクセルを踏みつければ強力なフレームの剛性感とあいまって、エンジンがドルンと震えるのがわかる。そして8本のシリンダーで爆発する怒りの交響楽とともに、猛烈に加速していく。直噴エンジンらしいトルクのつきを存分に味わいつつ、車窓の景色を一気に置き去りにして、前方一点だけをひたすら見つめながら加速。ほとばしるような大排気量の熱い心臓の鼓動を全身で感じながら、記憶や日常がスピードの彼方で薄れていく。 大排気量のフロントエンジン後輪駆動の走りとは、究極のところ、ロックバンド「ブランキー・ジェット・シティ」的なスリルに行き着くんですよ。ヴォーカルの浅井健一(元1stカマロオーナー)に重ねるなら、限界まで声を上げていくような、全身で生きていることを感じられる狂おしい走り。「嗚呼、いっそジェットエンジンにしてくれ」みたいなエンジンそのものを感じるための構造をもったクルマなんだ。
さて、このホットロッド村にはダッジ・チャレンジャーという最高のライバルが存在する。なかでも最上位グレードの「SRT デーモン170」は、カマロと同じく6.2リッターのV8 HEMIエンジンにスーパーチャージャーを付け、市販車最高となる1025馬力を叩き出す。このライバルに触発されたのがテキサスのチューニングメーカーであるヘネシー社で、スーパーチャージャー付のカマロ高性能モデル「ZL1」を1000馬力に引き上げ、「エクソシスト(デーモンに対抗する悪魔祓い)と名付けた。おらが村の力自慢大会みたいで最高でしょ(笑)。 でも、もうおしまい。チャレンジャーもまた、カマロと同じく生産中止を決定したんだ。 今回カマロの最終機に乗って、つくづく「伝説的なバンドの解散みたいだな」と思った。カマロはやるべきことをやり尽くしたんですよ。ホットロッドのみならず、大排気量エンジンの2ドアクーペとしても最高のラストダンスをみせた。進化するホットロッドは長男(コルベット)に任せて、次男は伝説の彼方へってね。そう、引き際はとても大事と思ったんだ。
シボレー カマロ ファイナルエディション
全長×全幅×全高: 4785×1900×1345mm エンジン: V型8気筒OHV 排気量: 6168cc 最高出力: 453hp/5700rpm 最大トルク:617Nm/4600rpm 駆動方式:RWD(フロントエンジン後輪駆動) 車両価格: ¥9,400,000 問い合わせ先/GMフリーダイヤル TEL:0120-711-276
写真 & 文:青木雄介