エンジン尻にバーン! ソ連の元「世界最大の旅客機」、なぜ超クセ強デザインに? でも「あれ?どこかで…」
あれ、イギリスに「そっくりくん」が…
旧ソ連で初めて開発された長距離向けジェット旅客機が、イリューシン「Il-62」です。この機体はエンジン4発が胴体最後部に集まった「4発リアジェット」という珍しいスタイルを採用しています。なぜこのような形状となったのでしょうか。 【写真】えっ…これが「ソ連のクセ強旅客機」「その元ネタ疑惑機」全貌です Il-62の初飛行は1963年。当時この機は「世界最大の旅客機」の触れ込みのもと開発されました。その全長は約53m、全幅約43mで、最大200席にも迫る旅客を一度に運ぶことができました。競合機はアメリカ・ボーイング社の707、ダグラス社のDC-8など。ちなみに、707は全長約44mで最大189席、DC-8(初期タイプ)は全長約46m、最大177席搭載と記録されています。 しかしIl-62は、欧米の競合機とは大きな違いが存在します。 ともにエンジンを4基搭載していることは共通しているものの、707やDC-8は主翼の下に吊り下げているのに対し、Il-62は先述のとおりリアジェットです。リアジェットはエンジンが2発で、比較的小さいサイズの旅客機では比較的よく見られたスタイルのひとつでしたが、大型の4発機でこういった配置を採用するのは、かなり珍しいケースといえるでしょう。 Il-62は、この尾部にエンジンを4基搭載するスタイルの採用で、客室の騒音を減らし快適性をアップさせたほか、空力特性や重量、コストなどを改善させたとしています。 なおIl-62の開発開始より少し早い時期に、イギリスでは航空機メーカー、ビッカース・アームストロング社が「VC-10」を開発し、1962年に初飛行を実施しました。そして、こちらもなんと「4発リアジェット」のスタイルが採用されていました。真偽こそ定かではありませんが、東西冷戦下ということもあり、Il-62は、VC-10の設計を模倣して造られたモデルであるとウワサされることもあります。 なお、Il-62は当時ソ連の国営航空会社だったアエロフロートのモスクワ~モントリオール線で就航。同社では主力機のひとつとなったほか、1969年には、JAL(日本航空)の東京~モスクワ線において、日ソ共同運航という形でこの機が投入されました。 Il-62はシリーズ累計で300機近くが製造され、搭載エンジンを変更することで静粛性を高めた派生型も生み出されるなど、ソ連の民間機としてはヒット作のひとつとなっています。なお2024年現在も、北朝鮮の指導者である金正恩氏は、このモデルを専用機として保有しています。
乗りものニュース編集部)