更新需要の受注も自信…フジテックが5年ぶり刷新、国内エレベーターに備えた機能
フジテックは2025年春に約5年ぶりに国内向け標準エレベーターを刷新、販売する。主要機器を頂部付近に配置することで、水害による浸水リスクを抑えたほか、遠隔監視システムの強化により、メンテナンス性を高度化するなどの工夫を加えた。価格は個別見積もり。新設だけでなく、堅調に推移するエレベーターの更新需要などに向けて拡販し、日本市場での足元を固める。(編集委員・小川淳) 【写真】フジテックの国内向け標準エレベーター「エレ・グランス」 フジテックの西村茂夫常務執行役員(国内事業本部長)は、新しい標準エレベーター「エレ・グランス」について「エレベーターはこれまで地震対策が中心だったが、近年は豪雨などそれ以外の自然災害も発生している。新商品はこれらへの対応する機能を備えた」と説明する。 台風やゲリラ豪雨などでマンションやオフィスビルなど建物に浸水被害があると、従来のエレベーターは昇降路内部の浸水により、底部に設置した巻き上げ機や制御盤が水浸しになり、交換作業などで長期間の稼働停止になっていた。 新商品では主要機器の配置を頂部付近に変更した。そのため、機器の小型化や軽量化も実現したことから、現場における据え付け工事の効率性の改善にも貢献している。 すでに同業他社も機械室のないタイプで主要機器の配置を頂部付近に一部変更しており、フジテックも対応することで浸水被害への対応力を高める。 他にも同社は、エレベーターの運行を見守る遠隔監視システムの新しいユニットも開発した。通信方式を電話回線からIP回線に変更したうえ、エレベーターに設置する監視用機器の追加やモニタリング手法の変更などにより、データ収集の効率が大幅に改善したという。これらのデータを分析することで予兆を判断し、故障を未然に防ぐ予防保全を強化する。 エレベーター内の空間デザイン自体もこだわり、照明や色、素材、インフォメーションデザインなどを一新し、建物と調和するような空間のコーディネートの提案をしていく。さらに天井や壁などの素材は29色の中から建物と調和するデザインを選択できる。 同社ではこれらの特徴を生かし、幅広い顧客に訴求していく。同社では29年3月期を目標とする5カ年の中期経営計画で、新しい標準機の開発と導入を掲げている。 原田政佳社長は25年の国内市場の見通しについて「新設は底堅い重要があるのでは」と述べた上で、「働き方改革などで物件ごとの進捗(しんちょく)は、これまでよりスピードが遅くなり、エレベーターにも若干の影響がでるのでは」と見通す。 一方、更新需要については「古くなったエレベーターはまだまだある。当社の取り付けたエレベーターだけでなく、他社が設置したものも十二分に対応できる」と受注に自信をのぞかせる。