俳優・前田公輝、”あらゆる犯罪者役を演じてきた”葛藤の先に…「素を見せたほうが”本物”に近くなる」
◆ヒール役「当初は嫌だった」…だがその後、“悪”に対して気づいたこと
「今の僕があるのは『天才てれびくんMAX』での経験のおかげ。MCで臨機応変さを学び、それはお芝居にも生きました。大人のゲストの方々ともお話をさせていただき、またテレビで使ってはいけない言葉、トレンドの言葉、丁寧な言葉づかい、芸能界にいる人間としてのすべての基礎をそこで学びました」 だがその後、また壁にぶつかる。それは多くの子役が経験する、「子役と俳優のお芝居の違い」だ。 「子役のお芝居って喜怒哀楽でそれぞれどれだけその感情を出すかのパーセンテージで演じるんです。ですが喜んだあとに怒るとか、人の感情は喜怒哀楽がシンプルではない。複雑な心理描写を演じなければならないとき、子役のときの感覚が抜けず、相当な苦労を味わいました」 思い返せばそれまでは子役やタレントとしての意識が強かった。だが16歳の時、映画『ひぐらしの泣く頃に』で本格的に「俳優」という職業と出逢うことになった。自身の演じる軸を変えなければいけない。自身が感じる壁を一つずつ消して、何が得意で何ができないか自分を紐解いていくことを地道に続けていった。結果『ごくせん』『花ざかりの君たちへ』など、同世代俳優が多数出演する作品でも爪痕を残していく。 ところが、だ。そうした俳優活動を続けるうちに、明るく、いつも笑顔かつまじめで学級委員長などを務めていた彼自身の個性とはまったく異なる「悪役」や「犯罪者役」が続くことになる。 「当初は本当に嫌でした。一体どういうことだろうと疑問を抱きました。よく色々な役者さんが悪役はやっていて楽しいとおっしゃりますが、僕はまったくやりたいとは思わなかったんです。僕はどちらかといえば、犯人より警察のほうだろうと。ところがそこで、ハマり役だと評価をいただいた。ここで気づいたのが、苦手意識を持っていたものが自分の得意なこともあるんだということ。固定概念のおそろしさを知りました」 「その後、あらゆる犯罪者役をやることになるんですけど…(笑)」と、悪役への向き合い方に違いが出てきたことを振り返る前田。「おそらく自分が真面目だからこそ気付いたことに、“そういえばテレビで報道される犯罪者も自分が犯罪を犯しているという自覚があったのかわからないことがある”、がありました。世の中のため、自分の正義を貫くために犯罪に手を染めてしまう人もいます。寧ろ、どんなに容認できないと感じる悪行でも、その人のなかでは善であると行動する人もいる。善悪二元論で“人間”は演じられないのだという結論にいたったんです」。