佐野史郎 還暦迎えても「演じる事に飽きはない」
牙狼<GARO>10周年記念作品劇場版『媚空-ビクウ-』で巨悪・絶心を怪演している、俳優の佐野史郎。サブカルジャンルにも造詣が深く、ベテラン俳優陣の中でもその孤高感は群を抜いている。佐野の強烈な“存在感”を決定的にしたのが、連続ドラマ「ずっとあなたが好きだった」(TBS=1992年7月期放送)で演じた、狂気的マザコン男・冬彦さんだろう。放送から23年経った現在も語り継がれる名作ドラマ、名キャラクターについて、佐野の思いを聞いた。
絶妙な化学反応によって生まれた「冬彦さん」
「ずっとあなたが好きだった」は、エリート銀行マン・桂田冬彦(佐野)と見合い結婚したヒロインの美和(賀来千香子)が、姑(野際陽子)や冬彦の異常さに精神的にも肉体的にも追い詰められながら、本当の愛を掴んでいくまでを描く恋愛ドラマ。シンプルな物語構成ながら、近親相姦さえ思わせる姑と冬彦の親子愛、玩具だらけの部屋での木馬遊び、エリート銀行マンの面影を消す“顔面崩壊”寸前の駄々っ子ぶりなど、“異常”を絵に描いたような佐野の狂気的熱演が話題を呼び、最終回において34.1%の高視聴率を記録。ドラマから派生した「冬彦さん」「マザコン」は、当時の流行語大賞にも選ばれた。 ドラマは脚本家に、後に「踊る大捜査線」シリーズなどのヒット作を数多く手掛ける事になる、君塚良一。プロデューサーは、ゴールデン枠連続ドラマは2本目の貴島誠一郎が務めている。佐野は「君塚さんにとっては、初の連続ドラマで、貴島さんも2本目ということもあり、僕自身も含め、若い人たちが集まって作った作品でした。若いパワーゆえの勢いがあって、こういう風にしなければならないという概念がなかった。そこに『金八先生』『男女7人夏物語』を送り出し、連続テレビドラマのノウハウを知り尽くした生野慈朗さんが演出として加わった。若い力とベテラン、さらにバブル崩壊直後の日本の時代背景も手伝って、絶妙な化学反応が生まれた」と、当時を回想する。