佐野史郎 還暦迎えても「演じる事に飽きはない」
“冬彦さんブーム”を理解していなかった
強烈な印象をお茶の間に与えた“冬彦さん”像こそ、ドラマをヒットに導いた大きな要因の1つだが、当の本人は「僕としては、やっている事は普段と何も変わっていないんです」と話す。 「(冬彦を演じる)以前もOV『ラッキー・スカイ・ダイヤモンド』や映画『死霊の罠2 ヒデキ』などの妙な作品に出演していましたから、それらに比べれば“冬彦さん”なんて大人しいものですよ」と、佐野にとっては決して特別なキャラクターを創造したわけではないという。 ブレイクの実感も「台風の目の真ん中にいた人間ですから、当時は自分自身もよく理解していませんでした。日々撮影に追われていましたから、テレビや雑誌で話題作と取り上げられているのを見て“そうなのか”と思ったくらいで」と、熱狂する世間とは対照的。本人の狙いではない形で、一大ムーブメントが巻き起っていた。
還暦を迎えても「まだまだスタート地点」
ドラマ放送から早くも23年が経過。再放送やDVD、ネットを介してその衝撃は時代を超えている。「ドラマが放送されていた当時の社会的背景は今の日本とは違いますし、服装も古くて、携帯電話もない。けれども今観ても劣化を感じないですよね。古臭さもないし、独特な空気感がある。今振り返ると、あの内容を金曜夜のゴールデン枠で放送したというのは凄い。プロデューサーの力ですね」と笑う。 佐野自身は、今年3月に還暦を迎えたが「30代に比べたら、エネルギー量全開とはいきませんが、あの頃と同じような熱量は今も意識しています」と、冬彦を産み出した“佐野イズム”は健在だ。俳優としての意欲も衰える事はなく「演じる事に飽きが来るなんて、とんでもないです。まだまだこれからだし、まったくのスタート地点。まず満足することはないでしょうし、たぶん出来ません。もっと勉強していかなければいけない。これは謙遜ではなくて、本当にそう思っています」と、これからも進化を追求していく構えだ。 (取材・文/石井隼人) ■佐野史郎(さの・しろう)1955年3月4日、島根県出身。11月14日公開の秋元才加主演映画『媚空-ビクウ-』では、入心の術を編み出した天才的な魔戒法師・絶心役で出演。「秋元さんとは初顔合わせでしたが、彼女は以前歌って踊っていただけに、アクションの質はとても高かったです。(須賀)健太とは連続ドラマで長期間共演していたこともあり、大きくなったなと。アクション演技も様になっていましたね」と話している。