箱根駅伝Stories/活力に満ちている立教大 復帰後3大会連続の本戦「シード権につながる走りを」
積極性に粘り強さを上乗せ
とはいえ、「練習の考案はやはり知識が浅く、みんなでアイデアを出して真剣には作っていたのですが、たいしたメニューしか作れませんでした。そこはやはり指導者が頼りになるという思いがありましたね」と安藤主将は回顧する。 そこに、髙林監督の就任だ。選手たちが困っていたトレーニング立案に、「なんとかしましょう」と手を貸すあたりからスタート。6月までは来るレース一つひとつへの対応に追われたが、7月から腰を据えた強化に入った。 7~8月。そこでの「脚作り」が、新指揮官の持ち込んだコンセプト。アップダウンのあるコースを使い、カーボンプレートが入っていないシューズで負荷をかけていく。 強靭な脚は、予選会で酷暑の中で粘り抜いた走りにつながった。これまでのスタイルでもある「積極性」に、「粘り強さ」を上乗せしたのが、今年の立教大だと言える。 もう一つの特色が、全員参加の夏合宿。レベルに応じてグループを4つに分けており、そのうちC・Dのグループを引っ張った加藤広人副キャプテン(4年)が合宿地で話していた。「今年は同じ合宿に参加することで、意識高くやれている印象です」。 固定メンバー以外が醸し出す選手層が、今年は違う。全日本大学駅伝は主要メンバー中心の配置にこそなったが、伸びてきた下級生たちを起用するプランも温めていた。 合宿には関東インカレ2部1500m優勝の青木龍翔(2年)も帯同し、別メニューに取り組んでいた。9月の日本インカレ1500mは2位と躍動している。 選手たちはうねりの中を進んできた。指導体制の急ハンドルにも、「異なる知識を吸収できて引き出しが多くなりました」と林虎大朗(4年)。積極的に受け入れ、糧にする。 鍛錬の夏を挟んで、ひときわ力を伸ばしたのが3年の馬場賢人だ。予選会は積極的な走りで勝負を挑み、「後半は粘り倒すだけでした」と出し切った。「そんなに疲労を感じなくて、すぐ調整に入れました」と全日本も7区4位の快走。シード争いの集団に後ろから追いつき、競り合いをリードした。 「箱根は全日本の応用。さらにレベルアップしてつなげていければ」。馬場が流れを生み出す役目を担う。 負けん気の強い國安広人(3年)が馬場の躍進に刺激を受けている。「予選トップ通過は良かったですが、自分の走りには納得していません」と本戦をにらむ。 林も「夏の練習を一つもこぼさずにやれました」と充実し、持ち味のスピードにタフネスを積み上げた。予選会は冷静なペース判断で後半に押し上げ、全日本は疲労が残る中での粘り。「チームに貢献できる区間であれば上りでも下りでもいきます。単独走の力もついてきています」と強調する。 復路のポイントを担いそうな安藤は、「シード権につながる走りをしたいです。これまで本戦で貢献できていませんが、当時と違い粘り強さが確実についています。改善した動きで走れている姿を見せたいです」と力を込める。 63年ぶりとなるシード権獲得へ。時代を作ってきた選手たちが、その証を残す。
奥村 崇/月刊陸上競技