ヤマハ版ハンターカブ?! の「PG-1」に乗った! 原付二種の遊べるトレールをハンター/クロスカブと比較インプレ
優しく、どこまでも走りたくなるクロスカブ110
モーターサイクルとして走りの感触を繊細に楽しめるPG-1のコンセプトは、いかにもヤマハ的だ。一方で、細めの前後17インチタイヤを採用するクロスカブ110/CT125ハンターカブはというと、走破性では負けず劣らず、実用性では優っていると言っていいだろう。 まずはクロスカブ110から。エンジンは意外なほどパワフルで、加速/最高速ともハンターカブと同等か、下手をすれば少し速い。スペック上はハンターカブよりも控えめなはずなのだが……。たまたま試乗した車両の個体差かもと思ったが、クロスカブ110のほうが速いという話はけっこうあちこちで聞くらしい。 自動遠心クラッチのミートポイントもやや高めの回転に設定されていることから、スタートダッシュはPG-1よりも明確に速い。旧型エンジンの『ストトト』という鼓動感は薄れ、『シュルルーン』とかつてのスーパーカブ50のようなスムーズな回転感覚なところは好みが分かれるかもしれないが、個人的にはこっちのほうが好きだ。 ──積極的な走りももちろんできるが、一番楽しいのはそこじゃなくトコトコ走りだ。
ユニットステアを採用しているのでステアリングまわりの感触には曖昧さもあるが、多様な路面をトコトコと走り抜けるのには何ら不都合なし。現行モデルでキャストホイールを採用し、足元は少し硬質なフィーリングになったが、ブロックパターン寄りのタイヤ銘柄と長めのサスペンションストロークでうまく吸収している印象だ。 スポーティな走りを試してもトコトコ系の印象はあまり変わらず、A地点からB地点へと移動する“移動体”としての優れた資質はスーパーカブ譲り。ギヤポジションインジケーターなど実用的な装備もある。今回の3車のうち、どれかで日本一周のロングツーリングに出かけるならクロスカブ110だろうな、と思えた。
CT125ハンターカブは意外なほど硬派な乗り物
じゃあハンターカブはというと、トップブリッジまで伸びたテレスコピック式フロントフォークや前後ディスクブレーキといった走りの装備がクロスカブ110との大きな違いを生んでいる。 クロスカブ110と同サイズ同銘柄のタイヤ(IRC製GP-5)だが、ワイヤースポークホイールとマッチングはこちらのほうがよく、足元でいなすクロスカブ110に対しハンターカブは強靭な車体の芯で受け止めるようなバランスだ。 なので、細めのタイヤの割にはガッシリした接地感になり、前後サスペンションもそれをしっかりと受け止める。ある程度ペースを上げたほうが全体の調和が取れてくるタイプで、やはりクロスカブ110とは似て非なる乗り物だ。 前述のように、発進加速も最高速もクロスカブ110と同等。エンジンのパルス感はクロスカブ110よりも少しあるが、旧型エンジンよりスムーズなのは同じ傾向だ。ちなみに発進加速でやや出遅れるPG-1だが、回転が上がってからは2車と同等もしくはそれ以上かもしれない。 ──車体のしっかり感が印象的。質実剛健な感じで、ある程度飛ばしたほうが車両本来のリズムに合う。 オフロードでの走破性はPG-1と変わらないか、あるいはスキッドプレートを標準装備するぶん優れているかもしれないが、よく動くサスペンションがスルッといなすPG-1に対し、こちらはしっかりとした手応えがある。また、巨大なリヤキャリアゆえかリヤまわりに重さがあり、若干のお釣りが出ることも。 走りを楽しむPG-1に対し、ハンターカブは無事に走破できるということに重きが置かれているような印象。例えば山奥まで分け入って何か目的を果たす、そんなタフな“道具”としての資質が高いように思えた。災害を想定して1台置いとくならコイツだな、という感じだ。