ヤマハ版ハンターカブ?! の「PG-1」に乗った! 原付二種の遊べるトレールをハンター/クロスカブと比較インプレ
ちょっとスポーティなコーナリングを試してみると、前後タイヤのソフトな接地感やライディングポジションの馴染みやすさから、かなり元気よく走ろうという気にさせてくれる。とはいえ出力は8.9psなので常識的な速度域で十分に楽しめた。また、前述のホイールリムの重さがちょうどいい塩梅に安定成分として働き、遠慮なく積極的に操れる。 もうひとつ、路肩の小さな段差をやや斜めに突っ切るとか、轍のうねった路面を通過する際でも安心感があったことを付け加えておきたい。どこをどう走ってもストレスなく楽しめる1台だ。
オフロードで真価を発揮!?
ちょっとしたフラットダートも走ってみたが、タイヤが想像以上にグリップするのと、前述のボヨンボヨンしたサスペンションが実にちょうどよく安心感がある。多少の段差でも底付きするようなことはなく、大切な個人所有車ということを思い出さなければ登坂や小さなジャンプも試してみたくなってしまったほど。 路面を優しくとらえる足まわりだけでなく、改めて感心したのは操作系まわりだ。フラットでスリムなシートは体重移動がしやすく、フレームカバーは下半身での押さえも利く。そして低速トルクがあり、自動遠心クラッチのセッティングが巧みなことで極低速ターンや加減速やとてもやりやすい。エンジンのレスポンスは穏やかで、グリップしにくい路面でもマシンを確実に前へと進めてくれそうだ。 そしてオフ車乗り以外には伝わりにくいかもしれないが、車体のセンターを見つけやすい。扱いやすい着座位置やスタンディングでの入力方向も自然に馴染めるうえ、多少外れても常に寛容だ。また、段差を乗り越えた際などのお釣りが少なく、前後どちらかに偏って振られるということもない。 ──オフロードでわくわくが止まらない谷田貝洋暁氏。もちろん筆者は個人所有車ということを考慮して丁寧に扱わせていただいた(目をそらしながら)。
オフロードで気になるとすれば、横型エンジンから生えているエキゾーストパイプが無防備なことだが、ベトナムでは多数のアクセサリーがホームページで公開されており、ラインナップにあるスキッドプレートを装備したら多少のガレ場でも行ってみちゃおうかなという気にさせる。 いかにもアジア向けな車体構成で、シフトロッドの取り回しなど細かいところを見れば実用本位で高級感などはキッパリと切り捨てている。でも、気兼ねなく遊べるこんなモデルこそが、将来にわたって長くバイクを楽しむライダー心を育ててくれるんじゃないだろうか。 ヤマハの良心、オフロード界のスーパーカブといえばセロー(異論は認めます)だったが、失われたと思っていたその心を受け継いだミニサイズのトレールモデルが、なんと海外で誕生していたのか……と嬉しくなってしまった。