「全員で戦いながらひとつの作品を作り上げた」映画『十一人の賊軍』鞘師里保、インタビュー。初めての経験から学んだこととは?
山田孝之と仲野太賀がW主演を務めた、白石和彌監督の最新作『十一人の賊軍』が11月1日(金)より公開される。11人の賊軍が藩の命令により決死の任に就く姿を描いた本作。今回は、賊軍の紅一点、なつ役で出演した鞘師里保さんにインタビューを敢行。本作への出演の経緯から撮影の裏側まで、さまざまな話をお聞きした。(取材・文/斎藤香) 【写真】鞘師里保が可愛すぎる…貴重な撮りおろし写真はこちら。グラビアカット一覧
なつを演じるための準備 時代劇へ挑戦するために習得した本格的な所作
―――本作への出演経緯を教えてください。 「ある日『白石和彌監督に会ってみませんか?』と突然言われたんです。もちろん白石監督の名前は知っていましたが、お仕事を一緒にしたことはなかったので、『急になぜ?』と、少し動揺しました」 ―――白石監督に会って、どのようなお話をされたのでしょうか? 「映画『十一人の賊軍』の“なつ役”に私を想定しているので面談したいということでした。脚本を読ませていただき、お会いしたのですが、作品については軽く触れるくらいで、主に私がこれまでどういう人生を歩んできたか、経験してきた出来事についての思いなど、私個人について聞かれることが多かったです。ざっくばらんにお話をさせていただいきましたが、心のどこかで『選ばれないだろうな』とも思ったりもしました」 ―――でも面談を経て、なつ役に決定したのですね。 「面談の際に、『撮影の見学に来ませんか?』と白石監督に声をかけていただいたんです。私は『まだ選ばれていないのに、撮影を見学していいのかな』と思ったのですが、見学の後、すぐに出演依頼の話が来て、あっという間に決まりました」 ―――本作は、時代劇なので準備が大変だったのではないでしょうか? 「お芝居のレッスンに通ったり、日本舞踊や着付け、所作などを学んだりしました。着物の捌き方など自然にできないと江戸時代に生きる役として成り立たないので、一生懸命学びました」
『十一人の賊軍』で改めて学んだ幕末の日本
―――なつのキャラクターや背景はどのように考えて演じたのでしょうか? 「なつのバックグラウンドは映画では詳しく描かれないので、脚本を読んでシーンや状況から想像を膨らませて、白石監督に相談しながら役を作り上げていきました。 なつは、人のために行動するように躾けられていた女性で、自由がない人生だったかもしれません。でも人を信じる気持ちはあったと思うんです。それなのに裏切られてしまい、追い詰められて火をつける行為に至ったのではないかと。 政(山田孝之)を気にかけているのは、彼が妻を大切に思う気持ちを知り、自分もこんな風に愛される存在になりたかった...という憧れもあったと思います」 ―――本作の、舞台となった幕末について、出演されてから新たに知ったことや感じたことはありますか? 「明治時代への転換期であることは知っていましたが、詳しくなかったのでこの映画に出演して改めて知ったことは多かったです。新政府か旧幕府かどちらに付くかと迫られて起こったのが『鳥羽・伏見の戦い』だと思うんですが、意見が一致しないから内戦も多かったと思います。 また今の政治スタイルに近づく時代だったのではないかとも考えました。この映画で描かれる新発田の話は、この時代の歴史上、メインで語られる話ではないけれど、こういう人たちがいたんだということを知るのは大切ですし、彼らが時代に振り回されなからも懸命に生き抜いてくれたからこそ、今の私たちが生きているんだとすごく実感しました」