「特大ブーメランでは」実は野田代表が主張していた「総裁選直後の総選挙」
与党のトップが変わるときに民意を問え
これらに加え、さらに野田氏が掘り返されたくないのは次の主張だろう。首相公選制に絡み、今の石破氏が聞いたら大喜びしそうなことを訴えていた。 「選挙に関連しては、よく首相公選制の問題も取りざたされます。そのメリットは理解できるものの、現実的には、憲法の問題に立ち入ってしまいます。現時点では、実現性には乏しいといわざるを得ないでしょう。 ただし、私としては、現行の制度の中でも、与野党の申し合わせで、それに近いことが実現できると考えています。そしてそうすべきだとも。 具体的には、与野党で次のような申し合わせをするべきだと考えています。 与党のトップ、要するに総理、総裁が交代するときには、民意を問う、すなわち総選挙を行うという申し合わせです。と同時に、民主党の人間としては言いにくいのですが、私は、衆議院の優越をもっと強化してもいいと思っています。 衆議院優勢、衆議院の民意を優先するという方向性を一方で認めながら、そのかわり、トップが代わるときは必ず民意を問うために総選挙を行うことにすれば、実態としては首相公選に近づくと思います」 与党のトップ交代と総選挙との間のインターバルこそ明記していないものの、「トップが代わるときは必ず民意を問う」という文章を素直に読めば、与党のトップ交代から速やかに総選挙をすべきという主張と考えてよさそうだ。 ただし、このあと誕生した民主党政権時代には、そのようなことは行われていない。その点、今回、石破新総理は野田代表の長年の持論を代わりに実行しようとしているといえなくもない。 実のところ、野党が主張する「予算委員会での議論」への国民の期待値は低い。あら探しに終始するケースが多いと考える人も多いからだ。それよりは公約を掲げて選挙で争うほうがいい、という考えが当時の野田代表にはあったのだろうか。 「言行不一致」が指摘されるのは、石破新総理や野田代表に限ったことではない。政治とは妥協の産物であるとはよく言われるところ。責任ある立場となり、現実に向き合った際、過去の発言と矛盾が生じるのが政治家の宿命なのだろうか。
デイリー新潮編集部
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