AI処理の消費電力100分の1に…TDKが開発した素子「スピンメモリスタ」の実力
TDKは2日、人工知能(AI)の推論や学習の処理を低消費電力で行える素子「スピンメモリスタ」を開発したと発表した。AI処理に必要な消費電力を従来比100分の1に抑えられるという。センサーに内蔵するチップに載せて使うことを想定する。実用化に向けて東北大学などと連携し、2030年ごろの量産開始を目指す。 【写真】TDKが開発した素子「スピンメモリスタ」 メモリスタと呼ばれる脳のシナプスを模倣した素子と回路を用いて、AIを処理する過程を人の脳内の情報のやりとりに近づけることで消費電力を抑える。具体的には、従来の記録素子がデジタル記録に対し、今回開発したスピンメモリスタは脳と同じようにアナログで記録することで複雑な演算処理が低消費電力でできるという。ReRAM(抵抗変化メモリー)といった、ほかのメモリスタと比べデータを安定して保持できる。 実用化に向け、フランスの原子力・代替エネルギー庁(CEA)や東北大学国際集積エレクトロニクス研究開発センターと連携する。12インチウエハーを使用して量産品の開発を進める。佐藤茂樹最高技術責任者(CTO)は「まずは当社のビジネスの中で実績を積んでいく」と話した。 開発したスピンメモリスタは、端末側でAIの処理をするエッジAIでの消費電力削減に貢献する。