姫路出身の大橋さん、アジアSフライ王者に…亡き後輩思い、拳は世界へ
兵庫県姫路市出身のプロボクサー大橋哲朗さん(25)が、世界ボクシング機構(WBO)アジア・パシフィック・スーパーフライ級王座を獲得した。仲が良かった所属ボクシングジムの後輩の死を乗り越え、初めてチャンピオンベルトを巻いた大橋さんは「ここで終わりじゃない。一緒に世界へ行く」と誓う。(古市豪)
中学生の時、映画「ロッキー」にあこがれてボクシングを始めた。高校卒業後、真正ボクシングジム(神戸市)で練習を始め、2018年にはスーパーフライ級の全日本新人王を獲得。将来を嘱望されたが、21年にWBOアジア・パシフィック・バンタム級タイトルマッチで敗れるなど、なかなかベルトには手が届かなかった。
今年2月、同ジム後輩の穴口一輝さん(当時23歳)が亡くなった。昨年12月にあった日本バンタム級タイトルマッチの後、右硬膜下血腫の手術を受け、入院していたが息を引き取った。
野球観戦やキャンプに出かけ、トレーニングも私生活もいつも一緒。周囲からは「兄弟のようだ」と言われていた。ショックは大きかったが、ジムの仲間と「一輝のためにできることはオレたちがボクシングを頑張ることだけ」と前向きになることを決めた。穴口さんの死でベルトへの執念が宿ったといい、「一輝のおかげで強くなれた」ともいう。
4月6日に東京・後楽園ホールで行われたタイトルマッチには、穴口さんの名前を刺しゅうしたトランクスで臨んだ。東京へ向かう新幹線の車内で唾液を吐き続けるなど、計13キロの過酷な減量を克服して迎えた一戦。試合終盤の10回に、「気力まで振り絞った」と、集中打を浴びせてTKO勝ちした。
今月末、穴口さんの自宅を訪れ、勝利を報告する。望んでやまなかったチャンピオンベルトを巻いても満足はしていない。「大好きなボクシングができなくなった一輝のことを思えば、減量も練習もつらくない」。世界チャンピオンになることを一輝さんに約束するつもりで、「これからもボクシングに打ち込んでいくだけ」と闘志を燃やしている。