モリゾウさんが[メディア]を信じるワケ 公聴会が産んだ[ビジネスモデル]の原点って?
■水素社会の実現は自動車会社だけでは実現出来ない
スーパー耐久の取材に来た記者には「現場で見たこと感じたことをそのまま伝えてほしい」と語りかける。水素社会の実現は自動車会社だけでは実現できるものではない。だからこそ、モリゾウさんはメディアの力を信じ、伝えることを諦めていない。 実際に水素エンジンカローラのステアリングを握るモリゾウさんの姿が多くのメディアで報道されることで、水素社会実現に向けサイレントマジョリティと呼ばれる人たちの心を動かし始めている。 「私はジャパンラブ、日本を元気にしたいという想いで日々動き回っています」。トヨタのためだけでなく、自動車業界全体のために休みなく働き続けるモリゾウさんの原動力だ。
■2010年の公聴会が生んだモリゾウさんのビジネスモデル
2009年社長に就任したばかりのモリゾウさんは危機に直面した。北米や日本でおこったトヨタ車の大規模リコール問題だ。モリゾウさんは2010年にアメリカ議会下院の公聴会に出席し証言をした。猛烈なトヨタバッシングの中、モリゾウさんは正直に丁寧に答え、クルマを誰よりも愛していることを訴えた。 ありのまま真摯に話すモリゾウさんの姿にメディアは見方を変え、アメリカの世論も変わっていった。 後にモリゾウさんは社長としての原点は公聴会にあると語り、「あの場に立ち、正直な思いを話したことで『逃げない、嘘をつかない、ごまかさない』という自分自身のビジネスモデルができたのです」とも語っている。 その『逃げない、嘘をつかない、ごまかさない』という姿勢は会長になってもいささかも揺らいでおらず、認証不正問題でも記者の質問に正直に丁寧に答えていたことはご存知のとおりだ。 むしろ、記者会見や囲み取材で正直にありのままを話したことが切り取られ、ニュースになり、面白がられてしまう状況になっている。そのことがモリゾウさんは悔しく、残念に思っているに違いない。 去る7月18日に長野県茅野市で行われた交通安全を願う聖光寺の夏季大祭での囲み取材で、モリゾウさんが「今の日本は頑張ろうという気になれない」と発言したその趣旨は、切り取りや悪意のある報道が多すぎることを憂えた発言だ。 この発言の後の「強いものをたたくことが使命だと思っていらっしゃるかもしれませんが、強いものがいなければ、国というものは成り立ちません。 強いものの力をどう使うかということを、しっかりと皆さんで考えて、厳しい目で見ていただきたい。強いからズルいことをしているんだろう、だから叩くんだという考えは……」に、モリゾウさんのホンネが溢れている。