政治ブローカーのミョン・テギュンの予知力と世論調査の「術法」【コラム】
呪術師は呪文と術法で災いを免れるように助ける人だが、韓国では未来を当てる占い師という意味が加わった。 政治ブローカーのミョン・テギュン氏は、質問に含まれた依頼人の欲望を読み取り、それが実現するだろうと答えることで、慰めと希望を与える典型的な占い師の手法を使った。キム・ゴンヒ女史が2021年、「大統領が若い女性とともに(自分から)離れる夢を見た」と話すと、ミョン氏は「尹錫悦(ユン・ソクヨル)を国家と国民のもとに5年間送るという夢だ。当選する夢」という夢診断を示した。キム女史と初めて会った時、ミョン氏が語ったという「盲目の武士」と「跛者の呪術師」の喩えも、やはり夫を大統領にしたいキム女史の本心を見抜いた心理的なお守りだった。 「占い師の手法」で大統領夫妻の信頼を確保したミョン氏の助言は、大統領選挙陣営の報道担当の電撃的な交代と「親朴(槿恵)」派のユン・サンヒョン議員の復党および要職への起用をはじめとする選挙戦略の大きな枠組みを組み立てるのに影響を及ぼしたものとみられる。また、尹大統領当選後には知人との通話で「青瓦台に入ると死ぬ」と警告したと話し、大統領室内の「尹核関(尹大統領の核心関係者)」ラインを追い出したのに続き、英国女王弔問式への欠席、カンボジア訪問当時のファーストレディー団体日程への欠席に至るまで実際の国政に影響を及ぼし、公認介入と昌原(チャンウォン)国家産業団地の「請負」開発につながったという疑惑が積み重なっている。 ミョン氏がこれまでの呪術師と違う点は、高度に現代的な術法を使った点にある。相手の欲望に沿った耳障りの良い言葉がミョン氏の唱えた呪文だったとすれば、世論調査は彼の術法だった。ミョン氏に2位を1位に押し上げる才能があるという評価が与党「国民の力」の内部に広まっており、ミョン氏自らもそれを認めた。「10年間にわたり公の肩書がなかったオ・セフンが現職の国会議員、元国会議員、現役の市会議員一人もいなかったのに、どうやって(ソウル市長に)当選したのでしょうか(中略)イ・ジュンソク代表も(党代表選挙で)自分が1位になると思っていたのでしょうか。だから、イ・ジュンソクを党代表に押し上げてから大統領の座に座らせるのも、大したことではありません。一番簡単ですよ、大統領が」(CBSノーカットニュースとのインタビュー) 先の大統領選挙当時、国民の力の予備選挙で、ミョン氏が党員の支持の動向を把握し、世論調査に活用したという疑惑報道が出ており、世論調査結果を操作して尹大統領を1位に仕立てたという証拠が確認されたりもした。ミョン氏の誇る予知力の実体は、違法を働いた世論調査だったわけだ。 検察は11日にミョン氏の拘束令状を請求する際、公認介入と世論調査関連の容疑は含まなかった。疑惑の中核を避けたのだ。検察もミョン氏の呪術にかかったのだろうか。 イ・ジェソン論説委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )