「遺族への謝罪文の傍ら不倫相手に恋文を…」不倫関係続けるため29歳妻と1歳娘を殺害…元看護師の男に“無期懲役”判決 裁判長が断罪「汲むべき点は皆無」【判決詳報】
「妻の悔しさ、無念さ、悲しさ、絶望は筆舌に尽くしがたい」
争点となっていた殺害事件以前の殺人未遂、殺人予備事件における“殺意はあった”と認めた小林裁判長。続いて、量刑に対する理由が語られた。 新潟地裁 小林謙介 裁判長: まずもって2名の尊い生命が奪われたという結果は誠に重大である。妻は婚姻後、まもなくして被告人による不倫や預金の使い込みがありながらも、変わらず夫婦であり続けようとし、長女の誕生後はひたむきに育児に励みつつ、新居で渡辺被告と共に新生活を始めた矢先、渡辺被告に裏切られ、最期は長女の目の前で命を奪われた 法廷には、遺族が涙を流して鼻をすする音も響いていた。 まっすぐ前を見つめながら話を聞いている渡辺被告に対し、小林裁判長はさらに理由を説明する。 新潟地裁 小林謙介 裁判長: 愛する我が子を育てることも、その成長を見届けることもできないまま命を奪われた無念さは察するに余りある。長女は当時1歳になったばかりで、周囲から愛され、本来、父親である被告人に庇護されるべき立場にあったのに、その被告人から突然殺害されたものである。妻の悔しさ、無念さ、悲しさ、絶望は筆舌に尽くしがたいものと言えるし、長女の死も痛ましいというほかない そして、春香さんと純ちゃん殺害時の極めて悪質な犯行についても厳しく断じた。 新潟地裁 小林謙介 裁判長: 殺害の態様は、ロープを用いて2名を手早く絞め殺すというものであった。すなわち渡辺被告は妻に対して、背後から近づいて突如首にロープをかけ、これをはずそうともがく妻の抵抗を排して2、3分締め上げ、ぐったりとして鼻から血が出ていたにもかかわらず、手が震えているように見えたため、まだ息があると考え、再度首を締め上げて、完全に動かなくなったことを確認した。続けて、妻を起こすようにその肩あたりをたたく長女を見て、その首にロープをかけて絞め始め、眼前で苦しそうに泣く姿にも構わず2、3分間力を緩めず締め続けた結果、泣くこともできなくなってぐったりとしたにもかかわらず、鼻提灯が膨らんでいるのを見て、まだ息があると考え、再度首を締め上げて、完全に動かなくなるまで続けていた。いずれも一度締め上げているにもかかわらず、わずかでも生きている可能性を認識するや再度締め上げて息の根を止めたのであり、強固な殺意に基づく極めて悪質なものと言わなければならない 殺害後に渡辺被告が行った自殺の偽装工作についても… 新潟地裁 小林謙介 裁判長: 絞殺するために事前にロープを購入したり、窒息死に至る時間や血痕のぬぐい方を事前に検索するなど犯行は計画的である上、殺害後は稚拙ながらも妻による無理心中に見せかけるため、妻の携帯電話機を用いて遺書を作成したり、ロープを現場に垂らしておくなどの偽装工作も行っており、犯行後の情状も相当悪い 不倫相手との関係性によって浮き沈みはありながらも、殺意を持って犯行を繰り返し、ついには自らの手で妻子を殺害した渡辺被告。 量刑理由は、この不倫行為についても話が及んだ。 新潟地裁 小林謙介 裁判長: 殺害に至る経緯を見ると、渡辺被告は2021年3月末には妻に睡眠薬を摂取させ、未必的でありながらも殺意を持って、その運転を制止せずに被害者らを死の危険にさらす殺人未遂を犯し、同年9月には、妻を殺害するために塩化カリウムを職場から持ち出す殺人予備・窃盗を犯した末、同年11月、計画的に妻及び長女の殺害を実行した。少なくとも妻に対しては、徐々に殺害への意欲を高める中で都度殺意を生じ、ついには殺害を実現したものと言え、殺害への執ようさが目に余る。妻殺害の動機は、不倫相手との関係に居心地の良さを覚え、仲が深まっていく一方で、不倫や金の使い込みが発覚して家庭内で肩身の狭さを覚えるようになった結果、妻への不満が高まったが故のものと言える。自身の非を棚上げにした極めて自己中心的で身勝手なものと言うほかない。長女殺害に関しても、不倫相手との関係性の高まりが背景にあったといえ、妻の殺害を目撃され、恐怖を覚えたことにも動機の一端があるとしても、これまた誠に身勝手である。言うまでもなく、被害者らには何らの落ち度もない。経緯や動機にくむべき点は皆無である また、看護師である立場を利用した犯行について「その知識、技術及び立場を悪用し、本来治療目的で使うはずの薬剤等を利用して、殺人未遂及び殺人予備等の各犯行に及んだことも強い非難に値する」と言及した。
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