いわさきちひろの描いた草花、親しめる庭へ キキョウやサクラソウなど100株以上を植える 長野県・安曇野の美術館
今年で没後50年となる、信州ゆかりの絵本画家いわさきちひろ(1918~74年)が描いた「野」の草花に親しんで―。長野県北安曇郡松川村の安曇野ちひろ美術館で24日、秋の七草などの苗が中庭に植えられた。身近な所で野の草花を見ることも意識することも少なくなったことから、本紙コラム「今日の視角」筆者で生態学者の鷲谷いづみさん(74)=東京=が発案し、「共生の庭」と名付けた。 【写真】「共生の庭」に植えた草花を眺める鷲谷さん 共生の庭の広さは約50平方メートル。小雨の中、鷲谷さんやスタッフ有志が園芸用シャベルなどを使って作業。キキョウやフジバカマ、ススキといった秋の七草のほか、フキやワラビ、サクラソウなど100株以上を植えた。 庭造りは「自然」をテーマに同館で9月に始める展覧会「あれ これ いのち」の関連企画。鷲谷さんは昨年夏に展覧会への協力を依頼され、「お手伝いできることがあれば」と引き受けた。 ちひろの絵本には野の草花がたびたび登場する。出産のために母親が入院する間、田舎の祖母の家で過ごす少女を主人公にした「あかまんまとうげ」では、ワラビやスミレなど生命力あふれる植物を描写。「ちひろ 秋の画集」には子どもたちと秋の草花が描き込まれている。 秋の七草は奈良時代の万葉集に出てくるが、人の手が入らなくなった野山で見かけることは少なくなったという。鷲谷さんは「『野』だった所が人工林になるなどして、一番身近だった植物が一番遠い存在になった。絵本を楽しみながら実物を見てほしい」と話している。 同館はちひろの絵に込められた「あそび」「自然」「平和」をそれぞれテーマにした展覧会を今年3月から12月まで3期に分けて展開。現在は「あそび」の展覧会「あ・そ・ぼ」を開いている。