「もはやスーパーカーより貴重な存在!」 モータージャーナリストの斎藤慎輔がケータハム・セブン340Rほか5台の注目輸入車に試乗!!
文化の違いを楽しもう!
モータージャーナリストの斎藤慎輔さんがエンジン大試乗会で試乗した5台のガイ車がこれ! アウディA8 60TFSI eクワトロ、ケータハム・セブン340R、フィアット・ドブロ、マセラティ・グレカーレ・トロフェオ、ボルボXC40リチャージに乗った本音とは? 【写真26枚】モータージャーナリストの斎藤慎輔さんがエンジン大試乗会で乗った5台の注目輸入車の写真を見る ◆未だ学ぶこと多く 年に一度のエンジン大試乗会は、日頃から多くの新型車に乗る機会を与えてもらっている私にとっても、心躍る“仕事”の1つ。 まず、担当するガイシャが何になるか、それが最初の楽しみで、それが決まると、初めて乗るものあり、再確認することになるものあり、ふだんは中々乗れないものありで、この仕事をやっていてよかった~と思う日になる。 こういう話をすると、日本人なのだから、国産車もちゃんと持ち上げたら、といった意見もよく伺う。たしかに最近の国産車もよく出来ているし、評価としては決して悪くならないのだけど、やはり文化の違いによる乗り味の違い、狙いの速度域の違いなどは間違いなくあって、心に染みるもの、訴えかけてくるものも違う。私には未だ学ぶことも多く、降りた後に、感謝とともに元気をもらえるのがガイシャなのです。 ◆アウディA8 60TFSI eクワトロ「これいいわ~」 世界的にセダン需要が萎んできている中ではあるが、ドイツ勢はしっかり最新セダンを送り出してきている。それもICE仕様をしっかりと用意して。 アウディも今後のBEV路線を強調していても、今は現実を見据えている感じ。今回のA8は、PHEVモデルで、正直なところ、インフラ環境からしても、一番現実に見合ったバランスの取れた仕様に思えます。仕立ての良さなどもさすがと思いつつ乗り込んでみれば、インテリアはコンサバ志向、というよりは、どこから見てもアウディだなという感じ。冷静を装って全体像を見ながら、EPC会員の方を横に乗せて走らせてみれば、とんでもなくよくできていることに、ただただ「これいいわ~」を連発することになるのだった。 西湘バイパスでのバネ上の落ち着き払った動き、安定感、箱根ターンパイクでのトレーサビリティの高さと綺麗な姿勢の維持、そして、PHEVの駆動用バッテリーは乗り始めからエンプティの状態だったながらも、パワフルでいて極めてスムーズでマナーのいいドライバビリティなど。「参りました」でした。 ◆ケータハム・セブン340R「スーパーカーよりもはや希少」 今年の東京オートサロンで初お披露目されたばかりのケーターハム・セブン340Rですが、こんなにも早く乗せていただけるとは。 セブンが最近ではスーパーカーの類よりも、もはや貴重かもと思えるようになった。車重540kgなんていうスポーツカーが新車として売られているのは、もはやセブンだけだし、半身を剥き出しにして乗る緊張感が得られるのも、4輪ではこれだけ。 オドメーターを見るとまだ200kmにも達していない。なのに「好きなだけ回しちゃっていいです」と言ってもらえれば、もう楽しむしかないでしょ。フォード製の2リッターデュラテックは172psと今となっては平凡な数値ながら、ド新車とは思えない豪快かつ軽い回転フィールで、腰まわりから威勢よく吹き込んでくる走行風と、エイボン製のタイヤが跳ね上げる小石がバチバチと飛んでくる中で、自在な加速を可能にしている。LSDを備え、振り回すのも簡単ではあるけれど、一方でしっかりと路面を捉える安定性を備えることも確認。ただただ楽しませてもらいました! ◆フィアット・ドブロ「思いのほかに」 ルノー・カングーにはじまり、シトロエン・ベルランゴといった欧州のカーゴ車両ベースの乗用車の、日本でのちょっとしたブーム。プジョー・リフターはまだしも、そのフィアット版のドブロまでも日本仕様を用意してくるとは思ってもいなかった。 ちなみにイタリア本国では、すでに大半がBEV仕様とのことで、いまとなってはディーゼルは輸出用に用意するといった状況らしく、これまたちょっとした驚きじゃないだろうか。なによりありがたいこと。 ドブロが素敵なのは、商用車ベースらしい黒バンパーをそのままに、ベルランゴやリフターよりも装備も少しばかり簡素にして、価格もお安くしている点。 なのだが、ドライバー目線からすると、そんな雰囲気でありながら遠出も楽々にこなすばかりか、実はワインディングも気持ちよく走れてしまう。一人乗車だとリア荷重が軽いこともあって、アンダーステをちょうどよく補正するくらいにリアをごくごく軽く流しながら駆け抜けていけることに思わず笑顔が溢れたものだった。超実用的なのに思いのほかにファンなのです。 ◆マセラティ・グレカーレ・トロフェオ「飛ばすほどに幸せ」 プレミアム・ブランドのSUVは続々と登場しているが、これほど直球勝負的なものは珍しいかも、です。 エクステリアはマセラティの伝統に則り、極めた派手さはないが品を備えたもの。そして走りは徹底して拘っています。中でもトロフェオは特にそれが顕著です。 よく伝えられているように、エンジンは今回の大試乗会にも登場しているMC20と基本は同一。90°バンクの3リッター V6ユニットで、搭載位置に余裕があることもあり、さすがにドライ・サンプではなくウエット・サンプですが、その咆哮と豪快なパワー・フィールに、なんとも虜になってしまうのでした。 この快楽との引き換えだけならともかく、飛ばしていない時においてさえ、この時代にこの燃費でいいのでしょうか? と思ったりもしましたが、聞けばマセラティのお客さんに燃費を問題視するような人はまずいないのだとか。それよりともかくパワーを、だそうで、そりゃあこうなるなと納得させられた次第。普段使いにも十分応えてくれますが、飛ばすほどに幸せになれるので、強固な自制心が必要になるのでした。 ◆ボルボXC40リチャージ・アルティメット・シングル・モーター「なんだか嬉しくなる」 ボルボといえば、いわば安全オタクから環境性能一直線まで、いったん事を始めると徹底しているメーカー。そのくせ、その変わり身の早さも見事なもの。 といっても手段を素早く変えるだけで、目指すところは変わらない。その典型がXC40リチャージなんじゃないか。なんてったって、前輪駆動だった(AWD仕様もあった)ものが、いつの間にか後輪駆動に変えられてきたのは、ちょっとした驚きだった。 そんなことが可能なのは、もちろんBEVだからだけど、それにしても前代未聞。理由はバッテリー・スペースの拡大とかいくつか挙げられてはいるようだけれども、後輪駆動と知るだけで、なんだか嬉しくなってしまうのは、私のような昭和世代では珍しくなさそう。 走らせてみれば、そうそうこれなのよ、この後ろからの蹴り出し感、それに駆動力の影響のないステアリング。あらま、随分とスッキリとしたいい感じになっているじゃないですか。これが、理知的雰囲気をもたらすデザイン、本皮革の使用を一掃したインテリアの車から得られるという意外性もまた悪くないです。 文=斎藤慎輔 (ENGINE2024年4月号)
ENGINE編集部
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