中国産にも劣らない日本のクリ むきやすさは在来品種が遺伝子持っていた
秋の味覚、クリ。クリご飯やクリきんとん、マロングラッセなどで親しまれているが、日本原産のニホングリは、「天津甘栗」などの中国グリに比べても、なぜか渋皮がむきにくい。実は、渋皮の“むきやすさ”に関わる遺伝子が存在し、ニホングリもこの遺伝子を隠し持っていたことが、果樹研究所の研究で分かった。
品種改良に取り組んできたクリ(出所:農研機構)
「モモ・クリ3年、カキ8年」と言われるように、実際にクリは、種子をまいてから3年以上たたないと果実を収穫できないという。その渋皮のむきやすさも、収穫後でなければ判別できない。こうした長い時間と手間をかけながら、同研究所は品種改良に取り組み、現在のクリの主要品種である「丹沢」や「筑波」「石鎚」などを作り上げてきた。 さらに「食味がよくて、早く収穫できる品種を」と、1991年に早生系統の「550-40」と「丹沢」の交配育成に着手した。その結果、一部の種子から“予想外”の特徴を持ったクリができ、2007年10月に新しく品種登録したのが「ぽろたん」だ。「ぽろたん」は「丹沢」よりも収穫期は10日ほど遅いが、果実重は31グラムと「丹沢」(28グラム)よりも大きく、甘味も香りもある。何よりも研究者たちを驚かせたのは、渋皮のむきやすさだった。
「ぽろたん」名前の由来はむきやすさ
クリの実は一番外側に堅い“鬼皮”を持ち、さらに薄い渋皮が果肉をおおう。「ぽろたん」を焼き栗にして、フルーツナイフで渋皮のむけ加減を調べたところ、「1(容易)」から「5(困難)」までの評価のうち、「ぽろたん」は「1」と、中国グリと同じ程度だった。他のニホングリの「丹沢」や「国見」は評価5だった。 「ぽろたん」の名前も、渋皮が“ポロン”とむけること、交配した「丹沢」の子であることから付けられた。この“むきやすさ”が売りとなり、今では熊本や奈良、埼玉、茨城、岐阜、兵庫などの各県で生産されるようになった。しかし、そもそも、なぜこのような特徴が出現したのか。 果樹研究所の研究者たちは、「550-40」と「丹沢」の再交配や、「ぽろたん」と「筑波」「丹沢」との交配実験をして、「ぽろたん」の“むきやすさ”は、それぞれの親から引き継いだ“劣性”の遺伝子が2つ合わさって生じたことを明らかにした。両親の渋皮がむきにくかったのは、ともに“優性”遺伝子と“劣性”遺伝子とを1つずつ持ち、“劣性”遺伝子の性質が“優性”遺伝子に抑えられて表に出なかったためだ。