40年間無職の女性“人生初の収入”が自叙伝の出版「“生きづらい”が私にとっての普通でした」
発症から10年経って強迫性障害と診断
――著書で述べていた、精神病についても教えていただきたいです。 難波:2つあって、1つが「強迫性障害」です。強い不安やこだわりによって日常生活に支障が出る病気です。私は、「部屋」に誰にも入られたくない、いつも不安がある、手を洗うのに時間がかかると伝えたところ、診断されました。発症から10年以上を経て診断され、心療内科で投薬治療を続けています。しばらく通っていたら、2つめの睡眠障害や気力の低下など、うつ病の傾向も見受けられるとのことで、薬を処方してもらっています。 ――心の病気は、他人事ではない気がします。 難波:体の病気も心の病気も一緒で、早期発見と早期治療が大切だと思います。がんも早く対処しないと、手遅れになるじゃないですか。私の場合、発症当時は病名すらわからなくて治療を始めるのが遅かったんですけど、今でも「放置したのはよくなかったな」と、しみじみ思います。無理をすると治るのに時間もかかるからこそ、自分の体の声に素直になってみてほしいです。気軽に行ける、カジュアルなメンタルクリニックも増えてきていますし。
4年分の障害基礎年金が認められた
――難波さんは、心の病で障害基礎年金をもらっているんですよね。 難波:担当者と一緒に煩雑な手続きを数ヶ月かけて行って、審査結果が届くまでだいたい3ヶ月待ちました。障害基礎年金2級が認められ、月換算で6万円強の年金を受けられるようになったんです。「精神障害で年金を受けるのは難しい」と聞いていたので、信じられない思いもありました。 また、遡及請求も認められたので、一気に4年間分の年金も入ってきました。私の場合は、400万円。医療費以外にも家にお金を入れられるようになり、心が明るく照らされた感じがしています。
物書きで定期収入を得るのが最大の目標
――ご著書を、どのような人に読んでもらいたいですか。 難波:「なぜ自分はこれほど生きづらいんだろう」と思っている人に読んでもらいたいです。私は父から暴力を振るわれたときが辛かったんですけど、その他の箇所は「これが私の人生だ」と思って書いているので。自分にとっての「普通」なんですね。考えてみたら、生きやすいと思った体験もしていないかもしれません。 ――難波さんと同じ思いを抱えている人は多いかもしれません。40年間無職ですが、今後の人生設計は。 難波:定期的にお金を稼ぎたいです。ものを書いて暮らしていくのが、好きというより合っているな、と感じました。今、『気がつけば本屋さんに行っていた。』というリレー小説をX(旧Twitter)で書いています。私より前に「気がつけば○○ノンフィクション賞」を受賞した、忍足みかんさん、畑江ちか子さんと3人で。1人がポストしたら中2日空けて次の人が投稿しているんですけど、今のところ誰かが投稿すると翌日に投稿するみたいな感じで、更新頻度が多いんですね。追いつくように頑張っています。 ――1回に140文字では書き足りないのでは? 難波:物語を作るのがあまり得意ではないので、助かっています。ものを書いて定期収入を得る。今、最大の目標です。 <取材・文/内埜さくら 撮影/山田耕二> 難波ふみ(なんば・ふみ) 1983年 神奈川県生まれ、千葉県育ち。幼少期に父から受けた暴力がトラウマとなり、様々な精神障害を引き起こす。この世に生を受けてから一度も働いたことがない。第1回「気がつけば○○ノンフィクション賞」に応募、最終選考まで残る。応募当時は39歳だったため、タイトルを「39年間」から「40年間」に変更。本書発売年は、41歳の年となる。趣味は読書、好物は甘いもの。 【内埜さくら】 うちの・さくら。フリーインタビュアー、ライター。2004年からフリーライターとして活動開始。これまでのインタビュー人数は3800人以上(対象年齢は12歳から80歳)。俳優、ミュージシャン、芸人など第一線で活躍する著名人やビジネス、医療、経済や一般人まで幅広く取材・執筆。趣味はドラマと映画鑑賞、読書
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