生成AIが状況報告 IoT組み合わせ省力化 建設現場や公共トイレで
労働力不足が深刻化する中、現場の状況を把握できるIoT機器と生成AI(人工知能)などを組み合わせて省力化につなげる取り組みが進んでいる。生成AIの活用で、これまでパソコン(PC)操作が必要だったセンサーデータなどの情報収集が、チャットとの自然な対話で確認できる新技術が登場。建設現場の管理や公共トイレの点検を効率化するシステムが相次ぎ市場投入され、移動時間の削減や人員配置の最適化を支援している。 【関連写真】「現場の映像を見せて」と入力すると、生成AIが映像を見せてくれる IoTシステム開発を手掛けるMODEは、主力のクラウド型IoT基盤サービス「BizStack(ビズスタック)」に、対話型生成AIを搭載した新サービスを5月1日から本格提供する。生成AIとIoTを組み合わせ、建設や工場などの現場データを生成AIが監視。異常があった場合には、現場作業員のスマートフォンを通じて生成AIが自動で話しかけ、状況を知らせてくれる仕組みだ。 従来、現場のIoTセンサーやカメラで計測した数値やグラフデータは、現場事務所などに設置したPCのダッシュボード画面で確認できるようにしてきた。ただ導入企業から「現場作業員は常にPCの前にいるわけではなく、PCでしか確認できないのは不便」といった要望が寄せられていた。 上田学CEOは「センサーや現場の数だけ多数のデータ探索が必要だったものが、生成AIがアシスタントとして必要に応じて情報をまとめてくれるようになる。IoTのインターフェースに生成AIを組み合わせたのは世界初だ」と強調する。 現状は生成AIとの対話にチャットアプリで対応しているが、現場のニーズに合わせ、インカムやスマートグラスの活用も検討する。上田CEOは「今後は1カ月に1度は新機能を追加していきたい」と意気込みを示し、この技術で世界をリードしたい考えだ。 国土交通省の調査によると、2025年には建設業の労働人口が約90万人不足すると予測され、慢性的な人手不足と作業員の負担増に伴う現場の安全対策の両立は急務となっている。建設業にとどまらず、トラック運転手の労働時間が規制される物流2024年問題や医師の働き方改革など、人手不足はあらゆる業界で深刻な課題となっている。 住宅設備機器大手LIXILも、トイレ清掃員の業務負担削減を目指し、IoT機器との組み合わせで公共トイレ掃除を効率化するクラウドサービスの提供に乗り出している。IoTセンサーを便器に取り付け、詰まりやあふれを検知。便器内が異常な水位になると給水を停止するとともに、清掃員にアプリで通知する。 画面上で機器を一括管理でき、これまで季節が変わるごとに1台ずつ手作業で実施していた便座温度の変更をアプリで一括操作できる。既にJR大阪駅などに導入され清掃員の業務負担削減につながったという。
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