アニメ・ゆるキャラ活用の地域おこし 「成功」に必要なことは
ゆるキャラ「くまモン」やアニメ「らき☆すた」などのいわゆるポップカルチャーを活用した地域おこしが活発です。くまモンの関連商品販売額は年間300億円を超え、らき☆すたの舞台となった埼玉県の鷲宮神社では年末年始の参拝客が約5倍に増加するなどの成功事例もあります。しかし、こうした取り組みのすべてが成功しているわけでもありません。 17日からは「ゆるキャラグランプリ2013」の投票が始まり、ゆるキャラ人気はまだ続きそうです。こうしたゆるキャラやアニメを活用した取り組みで成否を分けるポイントは何なのか、こうした取り組みの意義と課題について、「デジタルコンテンツ白書2013」でポップカルチャーによる地域おこしを分析した三菱UFJリサーチ&コンサルティングの萩原理史氏に聞きました。
ゆるキャラ、アニメ活用なぜ増えた?
「デジタルコンテンツ白書2013」によると、ゆるキャラを活用した取り組みは1200以上、アニメを活用した事例は35あるといいます。 ―――――なぜポップカルチャーを活用した地域おこしが増えたのでしょうか? 2つの要因があると考えられます。「需要の変化」と「供給の変化」です。「需要の変化」は、アニメやマンガを子供の頃から楽しんでいた層が大人になることでポップカルチャーへの理解が進んだこと。「供給の変化」は、2007年の「ひこにゃん」登場などの大きな成功事例によって、地域おこしにおけるメディア活用の重要性が認識されるようになり、様々な地域に広がっていったということです。
成功のポイントは
―――――あまたある事例の中で成否を分けたポイントはありますか? そもそも「成功」とは何なのか、という問題があります。その意味で、成功した事例では、取り組みの「目標設定」と「仮説設定」がはっきりしていた、ということが言えます。漠然とよその事例にならって「人気出ているからやろう」だとうまくいかないことが多いようです。 ■くまモン 例えば「くまモン」は、九州新幹線の全線開業を機に、大阪をはじめとする関西をターゲットにした観光誘客・企業誘致を目指した熊本県が、関西での話題づくりのために進めた取り組みです。その結果、すべてがくまモンによる効果とはいえませんが、くまモン登場以降の2011年度の旅客流動は140万人と前年より5割以上増えました。関連商品などの売上は2011年で25億円、2012年で年間293億円にのぼります。 ■やなな 別のゆるキャラでは、岐阜市の柳ヶ瀬商店街の非公式キャラクターだった「やなな」の事例があります。やななの目的は、商店街の意識改革を進め、柳ヶ瀬商店街の「ファン」を作ること。岐阜市では郊外型の複合型ショッピングセンターに押され、市中心部の商店街が衰退していく一方でした。「駐車場がないから来られない」というのは言い訳で「商店街のファンなら買いに来る」、そのためのファン作りを目指しました。今年3月には人気のピークでありながら引退しましたが、地元のおばあさんが引退を惜しんでくれるなど、ファン作りには成功したといえると思います。 ■らき☆すた 「らき☆すた」の鷲宮町(現・埼玉県久喜市)の場合は、「聖地巡礼」として鷲宮町を訪れていたらき☆すたファンたちを「もてなしたい」という思いが出発点でした。そうした取り組みが積み重ねられることによって、ファンに対する「おもてなし」が充実した地域としてのイメージが確立され、らき☆すたのファンが鷲宮のファンになり、リピーターが生まれています。鷲宮神社の正月三が日の参拝者数は、アニメ放映前の2007年は9万人でしたが、2011年以降は47万人という高い水準を維持しています。 ―――――こうした取り組みには地元の人に理解と協力が不可欠ですよね。 そうですね。地域の人を「置き去り」にしない仕組みが必要だと思います。持続的にしていく上では、地域の人達に納得してもらわないといけないですから。 らき☆すたの鷲宮町では、商工会が主導して取り組みが始まりましたが、例えば、全部で10種類ある「絵馬型ストラップ」を協力店舗に2種類ずつ平等に分配し、訪れたファンたちが町内を回遊できるようなやり方を取りました。また行政との連携を進め、らき☆すた特別住民票の売り上げで町内の街路灯を新設したりするなど、地元住民への利益還元も行いました。