大谷も立証、最新研究からわかった「長眠」の効果 起きている間に学んだことを脳に定着させる
しかし、起きている間に極限まで突きつめたトレーニングを行い、脳と筋肉が完全にシンクロした状態で眠りに就くと、「レム睡眠」状態の脳は本当に体を動かしているのと同じ感覚で活動を続けるようになります。 実際には体を動かしていなくても、脳内に起きているときの感覚が強く残っていることで、いわば夢の中でバーチャルなトレーニングを続けられるわけです。 もちろん、筋肉は完全に休んでいますから疲れるどころか疲労が回復していきますし、夢の中でいくら練習してもけがの心配はありません。
脳内でなら、実際にやったらけがにつながってしまうような動きもノーリスクで試すことができますから、成長のために不可欠な試行錯誤の範囲は現実よりも広くなります。 長眠はアスリートや棋士など特殊な職業の人にしか使えないわけではありません。たとえば自分が海外に留学または転勤して、日本人が全くいない環境に置かれたと想像してみてください。 寝る直前までがんがん外国語で話しかけられ、四苦八苦しながらそれに返答し、あるいは自身の主張を必死で伝え、疲れ切って眠りに就いたとしたら。きっとそのまま、外国語で夢を見てしまうのではないでしょうか。
そしてその夢の中で、意地悪な質問を小粋なジョークで切り返せたり、会心のプレゼンで自分の思いを相手に伝えられたりしたら、翌朝からの自分にも生きてくると思いませんか。 起きている間に極限まで自分自身を追い込むことで、夢の世界までも自分の成長に活用するのが、長眠なのです。 ■夢から覚めたら大技ができるように! もう1つ、長眠のカギを握るのが、最新研究で明らかになってきた「浅いノンレム睡眠」の効果です。
睡眠は「レム睡眠」「浅いノンレム睡眠」「深いノンレム睡眠」の3つに大別されます。 このうち、「浅いノンレム睡眠」は睡眠全体の50~60%を占めるにもかかわらず、これまでその働きについてはよく分かっていませんでした。「浅いノンレム睡眠」の最中に「睡眠紡錘波」と呼ばれる特殊な波形の脳波が現れることが知られています。 最新の研究では、この睡眠紡錘波が出ている間は、起きている間に学習したことを脳に定着させたり、運動神経を発達させたりする効果が高まっていることがわかってきました。