【夏に飛び出せ!若手ジョッキー】異例の転身をかなえた坂口智康騎手 調教助手の経験を生かして今も欠かさず馬体チェック
奮闘するヤングジョッキーの本音に迫る夏競馬企画「夏に飛び出せ! 若手ジョッキー」がスタート。初回は調教助手から異例の転身を遂げた坂口智康騎手(33)=美・尾形=にスポットを当てる。遅咲きのルーキーが、自身の強みや今後の目標について語った。 ◇ 33歳で夢をかなえ、調教助手から異例の転身を遂げた坂口騎手。22日の東京ジャンプSではロードトゥフェイムに騎乗し、重賞初挑戦(8着)を果たした。 「馬主さまをはじめ、関係者の皆さまにはこのような舞台に立たせていただき、感謝しかありません。今回の経験を糧にしたいです」 謙虚な姿勢を崩さない障害界のホープは、中学生のときに騎手を志すも視力が足りずに断念。一度は夢敗れたが、その後も馬とともに歩み続けた。高校、大学で馬術競技に青春を注ぎ、大学時代には全国レベルで活躍。卒業後は北海道の坂東牧場で生産、育成を学んだ。「生産部門ではオジュウチョウサンの母であるシャドウシルエットに、育成部門では弟のコウキチョウサンに携わらせていただきました。このときから障害競走と縁があったのかもしれません」と振り返る。 その後、JRA競馬学校を経て2016年に美浦トレーニングセンターで調教厩務員となり、20年からは尾形和幸調教師の下で競走馬づくりに携わった。坂東牧場に尾形厩舎の管理馬が休養していたことがきっかけだった。尾形師は高校と大学で馬術の全国制覇を成し遂げている〝達人〟。馬術と競馬の両方で師匠といえる大きな存在だ。「(馬術の知識、経験が)すごい方で、騎手になってからはレースで生きる馬術的なアドバイスをいただいています。アプローチとかも含めて、馬をよく見てらっしゃいますね」と尊敬の言葉を並べる。 同じ馬術競技出身の小牧加矢太騎手に刺激を受け、かつての夢が再燃。2度目の受験で今年、見事に合格した。厩舎スタッフとして培った経験を生かし、今も馬体チェックや獣医師、装蹄師との連携は欠かさず続けている。 「一番勝ちたいレースは中山大障害」と大きな目標を掲げつつ、「事故を誘発しない騎乗で落馬を減らしたい。人馬ともに無事に回ってくることが一番の目標です」ときっぱり。オールドルーキーの旅路は、始まったばかりだ。この先に待ち構えるハードルも、力強く飛び越える。(吉田桜至郎)
■坂口 智康(さかぐち・ともやす) 1990(平成2)年12月16日生まれ、33歳。福岡県出身。専修大時代に全日本学生賞典馬場馬術大会で個人準優勝。大学卒業後は牧場勤務、JRA競馬学校を経て、2016年から美浦トレセンで調教厩務員、調教助手。24年に騎手免許を取得した。同年3月3日の小倉4R(トーセンアウローラ8着)でデビューし、5月19日の新潟4R(スピアヘッド)で初勝利。JRA通算25戦1勝(27日現在)。172・5センチ、53キロ。趣味はゴルフと掃除で、「掃除をすると頭がリセットされます」。