オープンカフェに船着場……“公園”化する東京の河川
都民に長らく愛される隅田川の名前を有名にしているのは、毎年7月の最終土曜日に催行される「隅田川花火大会」です。テレビでも生中継されるほどの人気を誇る隅田川花火大会は、東京の夏の風物詩として定着しています。 東京都は、その隅田川を魅力ある水辺空間にするべく整備を進めてきました。これまで、河川とその周辺は公共空間でありながら、あまり活用されてきませんでした。昨今、河川空間を活用しようという動きが活発化しています。隅田川でも、多くの部分で河川空間がさながら公園のように多くの人たちが集う、憩いの場に変貌しているのです。隅田川の両岸に整備されている隅田川テラスの例をもとに、東京都の河川空間の変化を見てみましょう。
隅田川両岸の親水空間の整備進む
東京都の東側を流れる隅田川は、東京北区から東京湾に至る全長23.5キロの河川です。隅田川は、東京都内だけでも北区・足立区・荒川区・台東区・墨田区・中央区・江東区の7区を流れています。そのため、桜の名所として知られる隅田公園西側は台東区、東側は墨田区といったように、名称が同じでも管轄する区が異なっている場合があります。 2013(平成25)年に東京都は「新たな水辺整備のあり方検討会」を発足させて、バラバラに管理されていた隅田川の親水テラスの連続化や夜間照明の整備に着手しています。 「隅田川両岸の親水空間が整備されるようになった背景には、政府が進める成長戦略があります。2011年に『河川敷地占用許可準則』の一部が改正されて、一定の条件を満たせば河川空間にオープンカフェや川床が設置できるようになったのです」(東京都建設局河川部) それまでの河川空間には、公園や運動場、自然観察施設などの地域住民のための福利厚生施設や水道管、送電線、堤防、水防倉庫といった公共性の高い施設しか設置することはできませんでした。隅田川のあちこちに船着場が整備されたことも河川敷地占用許可準則の一部が改正されたことによるものです。 隅田川に船着場が多数造成されたことで隅田川における動線が強化されましたが、交通網の充実といった効果だけではありません。隅田川を航行する船は、観光振興の目玉にもなっています。