仙台の広瀬川が赤く変色 原因は亜炭の坑道か 地下水たまり流出の可能性 全国各地でトラブルも【宮城発】
広瀬川は仙台を流れる一級河川だ。新幹線で東京から仙台駅に到着する直前、見えてくるのが広瀬川。ホームに降り立った際に流れる昭和の名曲「青葉城恋唄」(さとう宗幸)でも叙情たっぷりに歌われ、仙台のシンボルともなっている。その広瀬川が10月30日朝、突如として赤く染まった。広瀬川は2010年にも赤く染まる騒動があり、そのときは雨水管のさびが原因とされた。今回はそれよりも広範囲にわたり、上空から見ると2キロほどにわたって変色していた。その原因として有力視されているのが、石炭の一種、亜炭(あたん)の坑道だ。亜炭の採掘跡は全国にあり、戦前から戦後にかけては貴重な燃料として活用されてきた。なぜ坑道から赤い水が流れ出してきたのか、そこには仙台特有の事情もあった。 仙台・広瀬川の約2キロが赤く染まる 原因は亜炭鉱か
鮎もすむ清流が突然赤く
10月30日朝、前日夜から降った雨で水量を増した広瀬川の橋の上では、川をのぞき、思わず立ち止まる人の姿があった。川の水が赤く見える。それも川幅いっぱいに。 川の近くに降りてみると、水が濁っているというよりは、川底に何かよどんでいるようにも見えた。カニ漁のわなを引き揚げていた人に話を聞くと「こんな川は見たことがない」と驚いていた。捕まえたカニは元気よく動いていて、特に変わった様子はない。カニに何かが張り付いている様子も見られなかった。
2キロにわたる変色 半日で戻る
赤く濁った範囲は霊屋(おたまや)橋から宮沢橋の付近で、2キロ近くにわたった。その後、昼過ぎには川の色は元に戻り、魚の死骸なども確認されなかった。 2010年にも赤く濁る騒ぎのあった広瀬川。市街地に降った雨を川へ流す雨水管のさびが一気に流れ出たことが原因とされていた。前回、さびが流れ出たという雨水管を確認したが、赤く変色した水は雨水管のある位置よりさらに上流に広がっていた。
上流で堆積物発見 原因は亜炭鉱?
今回の原因は一体なんなのか?仙台市が調査を続けたところ、太白区の鹿落坂付近の雨水吐口でヘドロ状の堆積物が見つかった。自然由来の鉄さびを含み、臭いなどはしない。仙台市によると、ここには亜炭鉱の廃坑跡とみられる場所が接続されているという。 「亜炭」とは石炭の一種。東北大学の永広昌之名誉教授(地質学)によると、仙台市内では青葉山から八木山にかけて亜炭層が多くあり、今も広瀬川沿いでは黒い亜炭がよく見つかるという。亜炭は戦前から戦後にかけて家庭用の燃料として広く利用されていた。古くから亜炭の産地として知られていた仙台には、家族経営など零細事業者による多くの坑道があり、今もその名残が残っているという。 永広名誉教授は「戦後しばらくは採掘が続いたが、亜炭が燃料として使われなくなると、埋め戻す資金がなく、入口をふさぐくらいで放置された坑道もある。地層中にも鉄分はあるので地下水がたまって赤茶色い水となって流れ出ることがあり得る」と話す。