脚本・徳尾浩司×一戸慶乃が『ライオンの隠れ家』共作でつないだバトンは役者・柳楽優弥、坂東龍汰へ
■主人公とその弟のキャラクター作り秘話 作り上げた主人公について徳尾さんは「小森洸人(柳楽優弥)はあまり欠点のない主人公ですよね。主人公って大概どこか決定的に欠落したところがあるのですが、彼の場合は自分のことを責めるところがあっても、欠点はない」と。一戸さんも「欠点がないからこそ、変わる振り幅が大きいわけではないところが、すごく難しかったです」と“普通”なキャラクターを作り上げる難しさについて話してくれた。 自閉スペクトラム症の主人公の弟・美路人(坂東龍汰)を描くに当たって、本作の自閉スペクトラム症監修に入っている伊庭葉子氏が代表を務める「さくらんぼ教室」へ。この教室は1990年の創立から34年もの間、発達障害(神経発達症)を持つ子どもたちの教育に力を入れている歴史ある教育機関だ。このさくらんぼ教室に松本プロデューサーと共に、徳尾さんと一戸さんも見学に訪れたという。 「当然ですが、生徒さんたち1人ひとりにそれぞれ違った個性があるので、美路人というキャラクターを作る時には、一つの型に嵌めないようにすることが大切だと思いました。劇中で洸人と一緒に考えたり、喜んだり、悲しんだりということをきちんと、当たり前に描くべきだなと」と見学に行ったことで感じ取ったという徳尾さん。 一戸さんも「教室の他に、さまざまな書籍で勉強しました。その上で、みっくん(美路人)自身がこれまで経験してきたことや、積み重ねてきた毎日があり、それを経て今の小森美路人という1人の人間が存在して。そう思うと、みっくんには色々と思いを巡らせて書いていたかもしれません」と美路人の人生を深く考えて作り上げたことを語ってくれた。 ■主人公から学ぶ“かけ違わない”方法 “愛のかけ違い”から起こってしまった出来事と向き合うストーリーの話し合いを重ねて作り上げた2人に、思いが食い違わないようにする方法を尋ねてみた。「とにかく話すこと。打ち合わせでもたくさん話しましたし、その帰り道にも話して、今洸人たちがどういう状況に置かれているのか互いに把握するようにしていました。長く脚本を書いていると、調子が出ないときもあれば、スルスルと書けることもある。しかも本作ではヒューマン部分を大切にしたからこそ、人の気持ちの積み上げ方を間違えてしまうと、全く違うストーリーになってしまうという難しさもありました。なので、一戸さん、松本プロデューサーと『こういうところが難しいよね』『洸人はここで何を考えているのかな?』とコミュニケーションを密にすることを心がけました」(徳尾さん)。