熊本市の繁華街で「客引きだめだからね」よく見る顔が「わかりました」…「道を聞いただけ」摘発逃れも
忘年会シーズンでにぎわう熊本市の下通などの繁華街で、客引き行為が増えている。市中心部の今年の通報件数は昨年の倍となる230件を突破した。巡回の目を逃れるため客引き行為は深夜帯にずれ込み、巧妙化している。市の指導員とともに夜の街を歩いた。(高城琴音) 【写真】熊本県警、熊本市・下通の風俗案内所に立ち入り調査…18歳未満の従業員いないかなど確認
13日午後9時頃、下通アーケードは市民や観光客であふれ、団体客が飲食店前で歓声を上げていた。
アーケードから一歩入った路地裏。「客引きしちゃだめだからね」。熊本県警OBの指導員がスマートフォンを手にしたスーツ姿の男性に声をかけた。「わかりました」と返した男性は、この辺りではよく見る顔という。周囲にも客引きらしき人影が見える。指導員は「返事はいいが、しばらくしたらやるだろう」と話した。
巡回に同行した計2時間、あからさまな行為は見つからなかった。指導員が客引きの多い交差点に立って目を光らせると、それらしい男性たちがあっという間に姿を消した。巡回は県警とも連携して行っている。積極的に姿を見せ、注意喚起することが大事なのだという。
市は料金トラブルなどの急増を受けて2019年、中心商店街での客引き行為などを禁止する条例を施行し、あわせて指導員による巡回を始めた。違反者には指導員を通じて指導や警告などを行い、従わない場合は5万円以下の過料を科し、店舗名も公表される。
県警によると、18年に1000件を超えていた客引きに関する110番は、条例施行で半減し、新型コロナウイルス禍だった2022年には70件に減少した。しかし23年は116件に増え、今年は11月末現在で、232件と急増している。条例に基づく指導や警告も増えており、市によると今年度は11月末現在、前年度比20件増の24件に達した。
県警熊本中央署の上木大輔・生活安全課長は、「新型コロナに関する制約がなくなり、人流が戻ったことが主な要因ではないか。引き続き安心安全な繁華街作りに貢献したい」と語る。