「人生はつらくて複雑だけど……」 主演のポール・ジアマッティがキャリア最高の名演を披露! いつまでも心に残るほろ苦い人生賛歌『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』
今年度のアカデミー賞にもノミネート!
現代最高のフィルム・メーカーのひとりとして、その作品のほとんどが毎回、賞レースで話題を呼ぶアレクサンダー・ペイン監督。名優、ポール・ジアマッティを主演に迎え、今年度のアカデミー賞にもノミネートされた『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』が公開された。 【写真13枚】胸を熱くする人生讃歌『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』の映画ポスターほかスチールはこちら ◆3人のぎくしゃくとした共同生活 等身大の人間の姿をコミカルに、それでいて包み込むような温かな目線で描き続けてきた名匠アレクサンダー・ペイン。アカデミー賞脚色賞に輝く『サイドウェイ』や『ファミリー・ツリー』といった作品で、現代のアメリカを代表するフィルム・メーカーのひとりに数えられるが、そんな彼の最高傑作と言われるのが最新作『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』だ。 1970年の冬、ボストン郊外にある全寮制の名門高校。クリスマス休暇でほとんどの教師と生徒が里帰りする中、同僚からも嫌われている非常勤講師のハナムは、理由あって学校に居残る生徒の“子守役”を任じられる。2週間を一緒に過ごすことになったのは、成績はいいが反抗的な生徒アンガス。そこにヴェトナム戦争で一人息子を失ったばかりの料理長メアリーが加わり、3人のぎくしゃくとした共同生活が始まる……。 お互いに関心のなかった彼らが、次第に疑似家族のような信頼関係を築いていく。その変化の過程が実に自然で説得力がある。本作で映画賞を総なめにした料理長役のダヴァイン・ジョイ・ランドルフ、これが映画初出演とは思えない生徒役のドミニク・セッサの存在感も素晴らしいが、圧巻なのは教師役のポール・ジアマッティである。一度は人生に挫折した、孤独で偏屈な男が、同じように悩みを抱えた他者との交流を通して自己を見つめ直していく。 「人生はつらくて複雑だけど……」。 こんな主人公の台詞がいつまでも心に残る見事な人生賛歌だ。 ■『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』 1999年に長編劇映画2作目となる『ハイスクール白書 優等生ギャルに気をつけろ!』(傑作、必見!)がアカデミー賞脚色賞にノミネートされ、世界的な注目を集めたアレクサンダー・ペイン監督(写真左下)。以来、手掛ける作品はすべて高い評価を得ており、オスカー候補の常連としても知られる(本作も作品賞にノミネート)。惜しくも受賞こそ逃したものの、キャリア最高の名演を見せ、今年度のアカデミー賞主演男優賞にノミネートされたのがポール・ジアマッティ。ペイン監督とは2004年に主演した『サイドウェイ』以来20年ぶりにタッグを組んだ。6月21日(金)より、TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー。配給:ビターズ・エンド 133分 Seacia Pavao /(C) 2024 FOCUS FEATURES LLC 文=永野正雄(ENGINE編集部) (ENGINE2024年7月号)
ENGINE編集部
【関連記事】
- お値段なんと3767万円! ホントにこれが時計なのか? 世界限定50本、文字盤も針もローターもないウブロの超複雑時計
- 著名な陶芸家がかつて住んだ朽ちかけた古民家をリノベーション 古道具屋のオーナー夫妻が暮らす思わずため息がもれる素敵な空間とは?
- 「大人の素敵さがここにある」 踊りたくなるノラ・ジョーンズ これまでのイメージを覆す4年ぶりの新作『ヴィジョンズ』を聴く
- 最近よく目にする古びた昭和の中古住宅は、リノベーションでどう生まれ変わったのか? ビンテージ好きな施主と建築家が挑んだ「狭小昭和住宅」の夢の再生プロジェクト!
- 外からは何の店だか分からない? ぜひお気に入りの場所にしたい! 東京・青山の和カフェ「松葉屋茶寮」で味わう最高の贅沢