ドレイク、ジェイムス・ブレイクも魅了する「特別な歌声」Charlotte Day Wilsonを今こそ知る
叩き上げマルチミュージシャンとしてのライブ力
そう、ウィルソンはボーカルの大胆な加工などの編集感覚をトレードマークとしてきたアーティストだが、そもそもファンクバンドでの活動で叩き上げられた実力あるミュージシャンなのである。そのためスタジオという武器を捨て去って生身で勝負するライブの場でも強い。今年リリースされたライブ音源集『Charlotte Day Wilson (Live at Maida Vale)』は、その剥き出しのパフォーマーとしての実力が堪能できる作品となっている。 これはBBC Radio 1の番組「Benji B’s BBC Radio 1 show」のためにレコーディングされた音源をEP化したもの。BBNGとの連名で2023年にリリースされたシングル「Sleeper」、最新アルバムから「I Don’t Love You」と「Cyan Blue」の三曲を披露している。「I Don’t Love You」は同期音源も使っているものの、基本的にはピアノのみで歌うシンプルなライブだ。憂いを帯びた繊細な歌声は加工せずとも魅力的で、BBNGらしいヒップホップ以降の感覚を備えたジャジーな路線だった「Sleeper」は別種の美しさを獲得。ビートと一体となって聴かせるような楽曲だった「I Don’t Love You」では、歌が前に出てきてライブならではの生々しい感情表現が突き刺さってくる。「Cyan Blue」は自身でバックボーカルも担当したポストプロダクションありきの作りだったが、ここでは歌声は一本ながらアルバム音源以上にエモーショナルなピアノがそれを補って余り得る魅力を放っている。いずれも単なる音源の再現以上のものがあり、ウィルソンの強みがプロデューサー的なセンスだけではないことが窺える。 しかし、ウィルソンのライブの魅力は『Charlotte Day Wilson (Live at Maida Vale)』を聴くだけでは全てを感じることができない。ウィルソンが弾くのはピアノだけではないからだ。カナダの公共放送局「CBC Music」のYouTubeチャンネルにアップロードされているマッセイ・ホールでのライブ映像を見ると、ウィルソンはピアノ以外にもギター、サックス、タンバリンをプレイしている。さらにこの時はバンド編成で、アレンジもフォークやサイケデリックロックなどの要素があったりとレンジの広さも感じられる。 エッジーな編集感覚を持つプロデューサー的な魅力を持ったアーティストでありながら、ライブを通してクラシカルなR&Bやソウルの構造を学んできた叩き上げミュージシャンでもあるシャーロット・デイ・ウィルソン。一つの側面に限定されない引き出しを持つこの多才なアーティストが、今回の日本ツアーでは一体どんなライブを見せてくれるのか要注目だ。 --- Charlotte Day Wilson単独公演 2024年10月15日(火)渋谷WWW X 「朝霧JAM’24 (It’s a beautiful day~Camp in ASAGIRI JAM’24)」 開催日:2024年10月12日(土)・13日(日) 会場:富士山麓 朝霧アリーナ
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