ドレイク、ジェイムス・ブレイクも魅了する「特別な歌声」Charlotte Day Wilsonを今こそ知る
自身のカラーが色濃く出た最新作
そんなウィルソンは、今年5月に2枚目のアルバム『Cyan Blue』をリリースしている。メイン・プロデューサーはウィルソン自身とジャック・ロショーン。H.E.R.やタミア、最近ではビヨンセやケラーニなども手掛けているカナダのプロデューサーで、前作『ALPHA』にも参加していた人物だ。そのほか曲単位ではBBNGと並ぶ古くからの盟友リヴァー・タイバー、SZAの大ヒット曲「Snooze」などで知られるレオン・トーマス、ニッキー・ミナージュやエミネムなどの作品に関わるマシュー・バーネットらが名を連ねている。 しかし、作品自体は驚くほどこれまでの作品で聴かせたものと同じウィルソンのカラーが色濃く表れている。ジ・ウェイヨーでの活動で学んだというクラシカルなR&Bやソウルのエッセンスと、BBNGとも通じるヒップホップ以降のセンス。シャーデーとも比較される深みのあるソウルフルな歌声、そしてそれをピッチ調整や各種エフェクトで大胆に改造していく先鋭的な感覚。『Cyan Blue』ではこういった本来の持ち味をそのままに、前作と比べてどこか解放感のある作風が楽しめる作品となっている。 そんな中、前作との違いを考えるとしたらボーカルの早回しが挙げられる。これまでウィルソンは声のピッチ調整をする際、「Take Care of You」のように低速化して男声のように響かせることが多かった。しかし、今作での「Money」や「Forever」などでは高速化したボーカルを使用。思えばウィルソンの「Mountains」をサンプリングしたドレイクの「Fair Trade」もウィルソンの声を早回しして使っており、一見遠い立ち位置に見える二人だが刺激を受けていたのかもしれない。 良曲揃いの今作だが、ハイライトを挙げるとしたらスノー・アレグラをフィーチャーした「Forever」だろう。柔らかで多幸感のある美しい音像に乗せて歌う同曲は、正統派ソウルシンガー然としたスノー・アレグラの歌声との絡みにより、生霊のクワイアを従えるようなウィルソンのボーカル・アプローチの面白さが際立つ一曲だ。また、ローファイで繊細なドラムと不自然な切れ目の声ネタを用いた「I Don’t Love You」も素晴らしい。終盤で顔を出すデモのようにシンプルなパートからは、ウィルソンがエッジーな側面を取り払っても十分に魅力的な存在であることがしっかりと感じられる。