ブレーキングと加速が勝負を分ける、もてぎ開催の日本GP。中上貴晶が立ち向かう怪物MotoGPライダーたち
ストップ・アンド・ゴーのもてぎでの勝負を分ける加減速
日本GPが開催されるモビリティリゾートもてぎは、コーナー進入時のブレーキングと脱出時の加速、さらにはトップスピードがモノをいう、いわゆるストップ・アンド・ゴーと呼ばれるレイアウトを採用している。 【画像】中上貴晶が立ち向かう怪物MotoGPライダーの画像を見る(10枚) エンジンパワーが重要なコースゆえに、これまでもそこに優位性を持つドゥカティ、苦境に陥る前のホンダが有利な戦いを展開することが多かった。 またブレーキへの負担が大きく、MotoGP全車にブレーキシステムを供給するブレンボは、5種類の直径を持つカーボンディスクのうち、大径の355mmおよび340mmが必要な“ブレーキに厳しいサーキット”のひとつに位置付けている。 当然ライダーによって好き嫌いがあり、通算9度世界チャンピオンに輝いたバレンティーノ・ロッシもさほど得意ではなかった。最高峰クラス(500cc・MotoGP)で収めた89勝中、もてぎでの優勝は2001年パシフィックGPと2008年日本GPのみだ。
中上貴晶(LCRホンダ・イデミツ)の場合、スピードを乗せる中速コーナーが続くスペインのヘレス、アベレージスピードが比較的高く、Moto2時代に優勝したオランダのアッセン、盟友の故・富沢祥也から「パワーをもらえる」と話し、Moto2で3回表彰台に立ったミサノなどが好きなコースとなるが、母国ではMotoGP昇格以来、予選最高12位(2018年)、決勝最高11位(2023年)とこれといった成績を出せていない。 反対にブレーキングに強みを持ち、結果を残す選手もいる。今回は日本のエースが立ち向かう、そんな怪物ライダーたちを紹介しよう。
後輪が浮くのもいとわないハードブレーキングのマルク・マルケス
まず挙げられるのが、ドゥカティで復活したマルク・マルケス(グレシーニ・レーシング MotoGP)だ。
正確なブレーキングを短い間隔で求められるレイアウトに苦手意識すら抱いていたそうだが、125ccとMoto2で各1勝、MotoGPで3勝とすでに5勝。2016・2018年はいずれもタイトルをもてぎで決めており、相性は悪くない。 長い手足を駆使した滑らかなブレーキングを信条とするロッシに対し、マルケスはフロントブレーキを強くかけ、後輪が浮くのもいとわないスタイル。その一方でコーナー脱出時の姿勢制御や走行ライン修正のため、リアブレーキも多用する。 最高速度およそ320km/hを記録する長さ762mのダウンヒルストレートを駆け降りた後に待つ、90°コーナー突っ込みでリアを跳ね上げながら進入するシーンは見もの。 以前の中上はあまりリアブレーキに頼らないタイプだったが、マルケスのデータを分析して2020年からリアを積極的に使うスタイルを取り入れ、走りを進化させた。