酪農家もサイバー攻撃の標的に 海外で搾乳ロボ停止 日本でもリスク
栽培ノウハウが狙われる? 顧客情報も警戒を
IT分野の安全対策に携わる専門家にも取材した。日本ネットワークセキュリティ協会の前田典彦幹事(FFRIセキュリティ)は「IT化を進める以上、農業分野でもサイバー攻撃は起こり得る」と話す。 機器そのものへの攻撃に加え、パソコンなどに保存してある独自の栽培ノウハウを盗まれるリスクがあるという。 自身のシステムに侵入されるだけでなく、農家が取引する企業などが攻撃の標的になった場合「農家も攻撃に巻き込まれる可能性はある」(前田氏)。電子商取引(EC)サイトを運営している場合は、顧客の個人情報の取り扱いにも「最大限の警戒が必要だ」(同)。 前田氏は、農家にはまず「一般的なセキュリティー対策から始めてほしい」と促す。具体的には、パスワードやユーザー名といった情報を漏えいさせず、知っている人を限定させて厳密に管理する。パソコンにウイルス対策ソフト導入し、ITに詳しい人に相談できる体制をつくることも重要という。 人手不足を背景に農業でもIT化が進む中、先端技術を導入する時は「セキュリティーの徹底を忘れないでほしい」と前田氏は話す。 (小林千哲)
<メモ>食品・農業分野へのサイバー攻撃
米連邦捜査局(FBI)は2021年、食品・農業分野の企業を対象とした悪意あるソフトウェアの攻撃に注意を促す文書を発出。文書では「小規模な農場から大規模な生産者、加工業者、市場やレストランまで全体のビジネスに悪影響を及ぼす可能性がある」と指摘。定期的なデータのバックアップなどを呼びかけている。
日本農業新聞