「HUIS」遠州織物の品質価値伝え10年 浜松発ブランド 店舗設けず価格抑制、ファン拡大
遠州織物の産地発アパレルブランドを展開する「HUIS(ハウス)」(浜松市中央区)がスタートして10年を迎えた。産地機屋から仕入れた高品質の生地を使い、店舗を設けずオンラインを中心に価格を抑えた販売を展開。ファンを増やし、2024年7月期の売上高は6億2000万円と最高を更新した。松下昌樹代表(44)は自社の役割を「遠州織物の価値や魅力を伝え続けること」と強調する。 オンラインストアを開設したのは14年10月。当時、浜松市職員の松下代表と妻あゆみさんが立ち上げた。趣味のファッションを追求する中で、世界的に希少な旧式の「シャトル織機」で織られた生地と出合い、細糸を高密度に織り上げた柔らかく滑らかで、豊かな風合いに魅せられた。 シャトル織機を活用した生地の仕入れ先の地元機屋は、海外高級服飾ブランドとも取引がある。ただ、ハウスが提供するシャツの価格は平均2万円。仲介業者や商社を介さず、自社の固定店舗を持たないことでコストを抑え、松下夫妻や店舗スタッフがカタログのモデルを務めて広告宣伝費も抑制している。 天然繊維中心の素材と伝統技術との融合で、多様な生地が生み出されている遠州産地。販売でこだわるのは「浜松出身の自分も関わるまで知らなかった」(松下代表)遠州織物への高い評価や魅力を、消費者に丁寧に伝えることだ。全国の百貨店や商業施設での期間限定店やイベントの機会(23年は120カ所以上)を利用し、産地の背景や高品質な生地の特徴、職人のものづくりへの思いを併せて説明。同社の活動を理解する全国約50人のパートナースタッフもその役割を担う。 産地維持の重要性を今後の主眼に置く。機屋や前後工程を含めた職人の高齢化や後継者不在の課題と背中合わせの中、松下代表は「職人さんと一蓮托生(いちれんたくしょう)の関係。認知度をさらに高め、産地に関わる担い手の育成につなげたい」と話す。 <メモ>遠州地域では若手繊維関係者有志の団体「entrance(エントランス)」が産地を盛り上げる活動を活発化している。イオンモール浜松市野(浜松市中央区)内のインテリア店「リビングハウス」とのコラボで、店舗一角に1月末まで製品を販売する期間限定ショップを開設中。地場産業を学ぶ小学生向けの出前授業、担い手確保を目的に9月には市と連携した初のインターンシップ(就業体験)事業も運営した。
静岡新聞社