「家ごと飛ばされるかと」 台風10号被害の喜界島 住民協力し片付け作業
台風10号の接近、通過に伴う暴風などにより島内全域で大きな被害が出た鹿児島県喜界島では、29日も住民が協力して片付け作業を行ったほか、町職員らが被害状況の把握に追われた。特に島北部の小野津、志戸桶などで屋根や塀が崩れるなどの被害が多く、「家ごと飛ばされるかと思った」と当時を振り返る住民もいた。27日から発生している停電は29日午後7時現在、2040戸(総戸数の41・7%)で続いており、熱中症リスクの上昇も懸念される。 島内の一部で発生した断水は28日夜遅くに復旧。湾や赤連では29日昼ごろにかけて停電が復旧し、スーパーや飲食店などが営業を再開した。町職員は終日、各集落の区長らと被害のあった住家や農家を訪れ、被害状況の把握に奔走。役場には罹災(りさい)証明の申請に訪れる住民の姿もあった。 島全域で倒木や電線の垂れさがり、建物や農作物の損害が見られるが、小野津、志戸桶では海から吹き付ける暴風を受け、建物被害が集中。29日時点で停電に加え、携帯電話の通信障害も続いている。 小野津集落で家族と共に片付けを行っていた中学生は「(台風接近時は)家が揺れて怖かった。家の前で竜巻もどきが起こり、風が巻いていた。停電で暑くてたまらない」と話した。西喜代子さん(76)は住家に隣接する「西商店」(現在は閉店)が大破。被害があった際は隣家に避難しており「風がぐるっと巻いて、ばんっと吹き上げるように強く当たっていた。家の中も外もすべてめちゃくちゃで手の付けようがない。不安だが、近所の人に助けられている」と涙ぐんだ。
小野津の保崎正英さん(71)宅では、コンクリート塀で囲われた倉庫のトタンと木材の屋根が暴風で隣家の庭へ飛ばされた。「27日夕方から急に風が強くなり、台風が通過するまで弱まることがなかった。下から巻き上げるような風が吹きつけ、屋根のはりが耐えられず飛んで行ってしまったようだ。けががなくよかった」と話した。保崎さんの隣に住む村田真由美さん(65)も「(トタンが落ちた際)どっかーん、がらがらとものすごい音がした。家の下を通り抜ける風がすごく、家ごと飛ばされるかと思った」と振り返った。 池田誠さん(51)は自宅近くの小野津漁港に係留していた一本釣り漁船が港内に流され転覆。29日は建設会社の重機を用いて、集落住民総出での揚収作業を行った。「港内に寄せる波が高く、波で上下するうちに係留索が切れるか外れるかしてしまったようだ。残念だが天候のことなので仕方ない」と肩を落としながらも「前を向くしかない」と語った。 現場で見守った70代男性は「小野津でこんな風が吹く台風はほとんどなかったと思う」とし、60代女性は「誰が声を掛けたわけでもないけれど、自然と人が集まりみんなで協力できる。昨日も家の中より共有する道路の片付けを優先し、みんなで取り組んだ。集落のいいところと思う」と話した。