日清食品だけではない?!陸上実業団チームの危うい現実
好景気のバブルの時代なら、それらは「広告宣伝費」としてペイできるのだろうが、現在は、実質の広告宣伝の費用対効果の低いものへの出費は、経営トップも、そもそも株主が許してくれない。厳しい言い方をすると、一般社員が稼いだお金で、競技をやらせてもらっているというチームが大半なのだ。 「駅伝」のある長距離以外の陸上選手たちは、大学卒業後の進路に苦労している。山縣亮太(セイコー)、桐生祥秀(日本生命)のような一部の花形選手は別だが、日本選手権優勝クラスでも、競技を最優先できる企業に就職するのは簡単ではない。日清のように駅伝から撤退する会社が増えると、長距離選手の受け皿も確実に減少していくだろう。 会社の予算を使い、勤務時間内にトレーニングが認められている「実業団」という形態は、日本独自のもので、世界のアスリートは、「プロ」が基本だ。日本でも大迫傑、神野大地らがプロとして活動中で、4月からは公務員ランナー・川内優輝(埼玉県庁)もプロランナーに転身する。 日清食品といえば、テニス界のトッププレイヤーの錦織圭と大坂なおみが所属している。大坂が昨年の全米オープンを制覇したときは株価も上昇した。箱根駅伝など一部の大会は異常な人気を誇るが、世界中の情報をリアルタイムで知ることができる時代になり、スポーツファンの“見る目”は肥えている。世間の注目度という意味では、箱根駅伝を上回るようなステージはオリンピックや世界選手権しかない。 日本長距離界は恵まれた環境のなかで競技を続けてきたが、日清食品の方針転換が、今後の「企業スポーツ」に対する考えを大きく変えるかもしれない。 1980~90年代には大手銀行や大手保険会社に陸上部があり、実業団駅伝に参戦していた。しかし、その大半がすでに撤退している。2020年に東京五輪を迎えるニッポン。五輪バブルが弾けた後の企業スポーツの行方が心配でならない。 (文責・酒井政人/スポーツライター)