ハーモニー・コリンが語る「新しい映画作り」――映画とゲームの融合、そしてテクノロジーによる表現の実験
「AGGRO DR1FT」のあらすじは、家族想いの殺し屋が業界から足を洗うために、悪魔のようなターゲットの暗殺任務を遂行する、とまとめることができる。ストーリーは至ってシンプルで、語り口にひねりがあるわけでもない。べネチア国際映画祭の上映で観客の半数が途中退場したのも、さもありなんといった感じだ(残りの半数は10分間のスタンディングオベーションを送った)。トラヴィス・スコットが出演することでも耳目を集めたが、全編がNASA所有の赤外線カメラで撮影されているために、表情はちっとも見えない(シルエットだけでトラヴィスだと分かるのだが)。さらに、ボイスオーバーで何度となく繰り返される主人公の独白は両手で数えられるほどのパターンしかなく、暗殺対象のボスは昨今では珍しいほど単純化された、絵に描いたような“悪人”だ。しかし、それらは全て明確な意図の下に設計されているのだ。近年は映画を観ず、ゲーム三昧の日々を過ごしているという監督の意図の下に――。
「AGGRO DR1FT」はなぜ映画館で上映しないのか。EDGLRDが共有する「ゲームコア」という美学はいかなるものなのか。そして、今一番お気に入りのミーム映像とは。マスクを脱ぎ、葉巻をくわえたハーモニー・コリン(Harmony Korine)が語りはじめる。
――EDGLRDには多分野にまたがる若手クリエイターが世界中から集まっているそうですね。
ハーモニー・コリン(以下、コリン):うん、みんな若い。僕が最年長だからね。テクノロジーに基づくデザイン集団で、ゲーム開発者やグラフィックデザイナー、AIの専門家みたいな視覚効果の分野出身者もいれば、コーダーやハッカーのような技術者もいる。マイアミのスタジオにいつも集まっていてね。頭に浮かんだことはなんでも創ることができる場所だよ。
――アイデアをすぐに具現化できる?
コリン:そう、なんでもね。
――チーム作りはどうやって? 面接されることもあるのでしょうか?