意外と簡単? 老化のカギを握る『ミトコンドリア』の「質」と「量」を鍛える誰にでもできる3つの方法
ミトコンドリアはATPを作ると同時に活性酸素も生み出す。ミトコンドリアの中にも調子がいいものと、悪いものがあり、調子が悪いミトコンドリアは大量に活性酸素を生み出してしまうのだとか。細胞が正常に機能しなくなる大きな要因は、活性酸素によって細胞にサビのようなものがついてしまうからだ。 「この調子の悪いミトコンドリアを排除する役目を果たすのがマイトファジーというシステムです。マイトファジーは調子の悪いミトコンドリアを減らしますから、ミトコンドリアが減る。 減ったままではよくないので、新鮮なミトコンドリアを増やさなければならない。調子の悪いミトコンドリアがマイトファジーによって壊されたら、その分新鮮なミトコンドリアを増やすということが細胞の中では同時に行われていると考えられます」 ◆意外と簡単?「ミトコンドリアを鍛える」3つの方法! でも… 年齢を重ねていくと、このシステムがうまく働かなくなってしまう。しかし、これを活性化するためには有効だろうとされている3つの方法があると、岡本准教授は言う。 「1つは『適度な空腹』。12時間から18時間食べないでいると、体は一時的に栄養不足を感じ、それによってエネルギー不足にならないようミトコンドリアを増やすスイッチを入れることになります。午後7時に夕食を食べて、翌朝午前7時に朝食を食べるというイメージ。毎日がむずかしければ、休日だけでもいいでしょう。 2つ目は『適度な運動』。健康に過ごされている年配の方は、毎日歩いていたり、適度な運動をしている方が多いと思います。運動するとよく眠れて、すっきり目が覚める、集中力が高まる、体がよく動くということを経験されている方も多いと思いますが、それはミトコンドリアがうまく機能していることによるのかもしれません。その効用を経験的に感じているから、人は運動するのだと思います。 3つ目は『寒冷刺激』。寒い刺激を一過的に与えるとミトコンドリアが増えることがわかっています。昔から、乾いたタオルで体をこする乾布摩擦や、寒中水泳が行われているのは、それをやると体の調子がいいということを経験的に知っているから、世界各地で似たようなことが行われていると考えられます。湯上がりに冷たい水を浴びる、冷たい水で顔を洗うなども有効だと思われます」 これら3つが"ミトコンドリアの鍛え方"。 しかし、注意したいことがある。それは無理をして行わないこと。 「心的ストレスがミトコンドリアの機能低下を引き起こすというデータがあります。ストレスによって肌荒れしたり、脱毛するのはミトコンドリアの機能低下が原因の1つかもしれません」 自分にとって最適な運動の質と量、最適な食事の質と量を知り、「心地よく暮らす」ことが何より大事だと岡本准教授は言う。とはいえ、簡単なようで、これがいちばん難しいかもしれない。 岡本浩二 大阪大学大学院生命機能研究科ミトコンドリア動態学研究室准教授。マイトファジーの基本原理を分子・細胞レベルで明らかにし、その生理機能について研究している。 取材・文:中川いづみ
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